デジタル復元

京都・臨済宗大本山建仁寺(東山区)の襖絵「雲龍図」(重文,桃山時代,海北友松筆)4幅(吽形相(うんぎょうそう))がデジタル複製され,5/10まで公開されているようです.
今回のデジタル複製はNPO法人京都文化協会が2007年からキヤノンと3年間の期間限定で進めている文化財未来継承プロジェクト「綴TSUZURI」の一環として制作されたものだそうです.
複製は,原画一幅毎にデジカメで45分割撮影し,合成画像を特殊和紙に出力することで制作されたようです.綴プロジェクトの技術ページには,撮影・印刷・金箔・表具に関する技術について解説がなされています.ここでは,補足的なリンクのみ付けておきます.

ページではさらりと画像の光源ムラ防止や濃度バラつき補正,色調補正,レンズの収差補正等が述べられていますが,一つ一つは相当高い技術が用いられているのでしょう.また,このプロジェクトのために開発された専用和紙ってどんな紙なのか気になりますが,詳細は探せませんでした.一応,Tech On!のニュースによると,コウゾを主原料にミツマタを加えた専用紙らしいです.

撮影技術
印刷技術
金箔

Europeana徹底解剖

昨年末,公開と同時にアクセス過多で一旦サービスを停止するという事態に陥った欧州デジタル図書館「Europeana」.サービスが再開して2ヶ月近くが経ちました.そろそろシステム的にも利用状況も安定してきたのではないかと思い,ちょっといろいろ調べてみました.今回はそのまとめです.

■経緯
以下は,Current Awareness Portal・ITMedia・CNET Japanから拾って時系列に並べたニュース記事です.網羅的に集めたつもりですが,検索漏れがあるやもしれません^^

2005年
2006年2007年2008年
■協力組織
2009.02.15現在,108機関.まぁこう見ると意外と少なく感じますが,国の代表(National representatives)には各国を代表する図書館等が名を連ねています.
  • Archives 12件
  • Audio-visual collections 7件
  • Cross-domain associations 12件
  • Libraries 14件
  • Museums 11件
  • National representatives 26件
  • Other 2件
  • Project Contributors 12件
  • Research institutions 12件

■言語

ヨーロッパ中心の25ヶ国語にI18Nされています.
  • Catalan
  • Bulgarian (bul)
  • Czech (cze/cse)
  • Danish (dan)
  • Dutch (dut)
  • English (eng)
  • Estonian (est)
  • Finnish (fin)
  • French (fre)
  • German (deu)
  • Greek (ell/gre)
  • Hungarian (hun)
  • Icelandic (ice)
  • Irish (gle)
  • Italian (ita)
  • Latvian (lav)
  • Lithuanian (lit)
  • Norwegian (nor)
  • Polish (pol)
  • Portuguese (por)
  • Romanian (rom)
  • Slovak (slo)
  • Slovenian (slv)
  • Spanish (esp)
  • Swedish (sve/swe)

■機能

  • 検索
検索窓1つのGoogle方式.Advanced searchを選択すると,(「Any fields」,「Title」,「Creator」,「Date」,「Subject」)×3を(AND/OR)で検索できます.
  • My Europeana
登録ユーザの検索結果の保存,タグ付与,友達への紹介,等ができるらしいが,まだ登録も利用もできないようです.
こちらもデモがあるのみ.コンテンツの共有や再利用についてのアイデアを議論する場としてCommunitiesが用意されるようです.デモを見てみると,SNSのような運用を想定しているようです.
下側に作品の多さに比例して大きさの異なる西暦が並び,各西暦をクリックすると上側に作品が出てきます.上側に出てくる作品は横スクロールバーの動きに合わせてブワーっとフローして行きます.iPhoneのマルチタッチに近い動きか.驚いたのは,普通こういうのってFlashで作ると思うんだけど,全部JavaScript!なんとも….まだまだベータ版らしく,左側の検索窓から西暦を入れて検索すると,検索結果の西暦は大きさが変わらなかったりしますが,まぁご愛嬌.
実験的ラボ.大学や研究機関,コンテンツプロバイダと協力し,Europeanaの持つコンテンツを素材に実験的な機能を試していこうというラボです.今のところ,プロトタイプのSemantic Searchが公開されています.MultimediaN N9C Eculture projectのThe ClioPatria semantic search web-serverで動いているようです.これについてはEuropeanaのSemantic Searchのインターフェースも含め,別にもっと詳しく調べたいと思っています.

■コンテンツ

  • 概要
Europeanaは検索の窓口です.検索結果のサムネイルはEuropeanaのイメージサーバにキャッシュされているようですが,コンテンツ本体は参加機関のサーバから再生されます.従って,全てのコンテンツに関するコントロールと権利保持は各参加機関で行うことができます.
  • 資料件数
約200万件
  • フォーマット
フィルム,写真,絵画,音楽,地図,原稿,書籍,新聞,etc.
  • 将来的な話
2010年までに現在の200万点から,1000万点アイテムの完全公開を目指すそうです.そのため,実際にEUはデジタル化資金を拠出しています(Current Awareness Portal,2008.12.04).また,今はコンテンツの登録を文化組織に限定していますが,将来的には個人の所蔵等も登録公開できるような仕組みを作って,コンテンツの幅を持たせたいようです(INTERNET Watch,2008.11.21).

■相互運用性
詳細はEuropeana/EDLnet conference: Users expect the interoperableにあります.


■メタデータ

基本的にはQDC(The Qualified Dublin Core)のようですが,一部拡張もされています.詳細な仕様はMetadata elements in the Europeana prototype(pdf)にあります.

拡張エレメント
  • <dc:relation>のサブプロパティとして<europeana:isshownby>
  • <dc:relation>のサブプロパティとして<europeana:isshownat>
  • <europeana:usertag>

■閲覧

せっかくなので実際に有名なコンテンツを見てみました

いやぁ,全然徹底解剖してないけど,疲れちゃった.今日はこれくらいで.次は今回息切れが著しい相互運用性やメタデータ,セマンティック関連を中心に調べたいと思っています.てか,むしろそっちが専門に近いだろうに….

LOUVRE-DNP MUSEUM LAB

先日,大日本印刷のLOUVRE-DNP MUSEUM LABに行って来ました.


Museum Labは,"Lab"の名が示す通り,ルーブル美術館が持つ様々な美術作品を,大日本印刷の印刷技術/情報技術を用いることで新しい展示や美術体験に応用して行く方法論を模索することを目的としたラボです.

ラボでは当面,2006年から3年間で6つの作品テーマの展示を行う予定だそうで,今回は第4回目のテーマを見て来ました(実はとある委員会の招待で3回目の展覧会も見たのですが,まだここに書いていません.もう忘れ気味...).


この展覧会では,以下3点の技術的取り組みをしています.

  • メディアシオン・ツールとしての地図
  • 体験のさらなる共有化を実現するマルチタッチディスプレイ
  • AR技術の活用により,作品の鑑賞ポイントを分かりやすく

1つ目の地図は,リアプロ,あるいは液晶ディスプレイを用いて大きく高精細な地図の表現をしています.地図は情報の俯瞰,直観的理解に役立つツールとして採用されたそうです.また,メディアシオンとは,フランス語で「媒介」を意味し,作品と人をつなぐツール全般を意味しているそうです.

2つ目のマルチタッチディスプレイは,上記のディスプレイとアクリルで作られた立体地図,更に光センサを組み合わせたインタラクティブな地図です.立体地図を指で触れると,センサが感知し,ディスプレイに情報が表示される仕組みになっています.

3つ目のAR(Augmented Reality:拡張現実)技術とは,目の前にある対象物とコンピュータ上のバーチャル空間を同期させ,目の前の物に関する情報を取得したり,物をバーチャル空間上で動かすことのできる技術です.今回は,目玉の展示品の前に既に同期済の(多分独自開発の)AR端末が置かれており,端末を手で動かすと展示品を様々な角度で閲覧できたり,様々な情報が取得できるようになっていました.また,AR端末にはカメラボタンが付いており,気に入った角度で写真を撮れるようになっています.写真は帰る際にプリントしてお土産としてもらうことができました^^

以下では,より詳細な技術ポイントを紹介しています.


また,上記以外にも面白かった技術ポイントがありました.

  • ガイダンス端末とICタグ

ガイダンス端末はPDA型で(皮のカバーで覆われていたため,どこのメーカーのものか不明),ICタグ・骨伝導イヤホンと組み合わせて使います.まず,入場時に予め使用言語を登録しておきます.その後,ユーザが作品の前に立つと,ICタグと連動するサーバから自動的に選択された音声ガイダンスが配信され,イヤホンで聞き取れる仕組みになっています.骨伝導イヤホンにしているのは,ガイダンスを聞きながら,一緒に来た来場者と会話ができるようにするためだそうです.

また,ICタグは観覧者の閲覧履歴をサーバに返しているようです.受付で入場券をもらえるのですが,入場券に記載されている番号を帰宅後にWebで確認すると,閲覧記録が見られるようになっています.これの仕組みは科博でも取り入れられていたかと思います.

以下,ryojin3の閲覧記録から.



まずは閲覧記録です.ほとんど全てを見たので,全部記録されています.見た順番も分かるともっとよかったかもしれません.



次はAR端末で撮った写真.実際にプリントしたものももらいましたが,Webでも確認できます.「ラスター彩」の皿が飛び跳ねています^^

今回訪問してみて,DNPでは美術体験として「メディアシオン」という概念を導入していたのは非常に素晴らしい取り組みだと実感しました.文化財は様々な角度から見る,あるいは解説されることよってより一層理解が深まると思います.DNPでは情報技術を用いてこれまでの博物館展示にはないアプローチを展開しているのではないでしょうか.

なお,DNPの担当の方が語る記事が以下にありましたので,ご紹介しておきます.写真も豊富なのでここよりむしろ分かりやすいかと思います(ってそれを言っちゃオシマイですね).