観光立国の現状

外国語の案内職員配置18% 博物館の観光対応は不十分(47 NEWS)

出るかなと思って少し待っていたのですが,まだ各省のページにはニュースリリースが見当たりません.GW 明けなのかな.

もう少し情報収集してから,情報提供サービスについていろいろ考えてみたいと思います.

「独立行政法人国立美術館における情報<連携>の試み」を読んで

東京国立近代美術館が全文pdfで閲覧が可能な研究紀要第12号(2008.04.08)を発行しています.

その中で,美術館の情報連携に関する論文が発表されていました.
この論文について,少しまとめておきます.

主な要点は以下の通りです.
  1. 既に公開されている情報資源の整理
  2. いろいろな連携プロジェクトの紹介
    • 所蔵作品総合目録検索システムと文化遺産オンラインの情報連携
    • 美術館の所蔵図書の情報連携(ALCとWebcat)
    • 所蔵作品・所蔵図書・アートコモンズと想 - IMAGINEの情報連携
  3. 考察
それぞれについて,簡単な解説と考察を加えます.

1. 既に公開されている情報資源の整理

国立美術館とは
国立美術館の公開情報
上記の公開情報と国立美術館の事業展開は,国立美術館のWebサイトからリンクしてあるが,システム・運営主体(各館)・法人としてのプレゼンス(存在感)を向上させるためには,間口(人,方法,機会等)を広げ,更なる他関連機構との連携が必要.

2. いろいろな連携プロジェクトの紹介

■所蔵作品総合目録検索システムと文化遺産オンラインの情報連携

文化遺産オンラインとは
  • 文化庁の文化財ポータルサイト
  • 2007年10月現在80館が参加
  • 2008年4月現在60359件が公開
  • 各館から文化遺産オンラインへの登録方法
    • CSV形式でDBにインポート
    • オンラインで作品を1点ずつ登録
実証実験(1)
実証実験(2)
  • 4館総合目録を実証実験(1)の方法で文化遺産オンラインが収集
  • 2007年10月に実施
  • 登録件数が577件から28000件あまりに増加
  • 内訳
    • 東京国立近代美術館 11831点
    • 京都国立近代美術館 6950点
    • 国立西洋美術館 4242点
    • 国立国際美術館 5330点
    • 計 28353点
■美術館の所蔵図書の情報連携(ALCとWebcat)

ALC(Art Libraries Consortium)とは
  • 美術図書館連絡会.参加館が図書情報を持ち寄り,美術図書の館横断検索システムを提供している.
Webcatとは
  • 学術研究目的の図書情報検索サービス.
情報連携の流れ
■所蔵作品・所蔵図書・アートコモンズと想 - IMAGINEの情報連携

想 - IMAGINE - とは
  • 国立情報学研究所が開発した検索システム.複数のDBを一覧できるインターフェースと各DBを検索する連想検索エンジン「GETA」を持つ.
想 - IMAGINE Arts 構想
アートコモンズとは
  • 国立新美術館の展覧会情報サービス.
  • 2007年12月現在,以下の情報を提供.
  • 展覧会情報 12313件
  • 美術館・美術団体・画廊情報 約600件
  • 情報は増える一方で,コストの都合上情報提供の質を上げるのは困難になりつつある.
予備実験(1)
  • 4館総合目録(文化遺産オンライン実証実験(2)で用いたデータ)をGETAに食わせる実験.
  • 2007年度に実施.
予備実験(2)
  • アートコモンズから出力した展覧会情報から検索用メタデータを抽出.
  • メタデータは想 - IMAGINE Artsに登録.
  • 登録することで,文化遺産オンラインや東京国立博物館名品ギャラリー等と共に横断検索・情報提供が可能となった.
3. 考察

■メタデータの利用
  • アートコモンズと想 - IMAGINE Artsの連携予備実験からもわかるように,アートコモンズの情報をメタデータ化し,様々なシステムで利用することでメタデータを介した緩やかなシステム連携が可能.
  • アートコモンズに限らず,各館で管理している情報群(4館総合目録や,図書情報)からメタデータを抽出,構造化しておくことでメタデータを媒介に様々なシステム連携が可能かもしれない.
長くなりましたが,以上が論文のまとめです.長すぎてあまりまとまっていないか...

ryojin3の考察

さて,この論文を読んでの考察です.

このような取り組みはユーザにとっては非常に嬉しいものです.なぜなら,ユーザにとって利便性(検索システム毎に検索方法を覚えなくて良い)・網羅性(一度の検索で複数のシステムを検索できる)・質の確保(美術館のお済み付きの情報)といった観点から非常に有益だと考えられるからです.

また,メタデータを用いてシステムを媒介させるアプローチも正解だと思います.メタデータは人間の知識が反映されたものであり,コンピュータはメタデータを指針に,ユーザの欲する解を探しやすくなると言えます.

ここで問題なのは,どのようにメタデータをハンドリングすべきかに帰着するでしょう.

例えば,4館総合目録と文化遺産オンラインの連携では,目録を文化遺産オンライン形式に変換することで連携を実現しています.目録のどの項目を文化遺産オンラインのどの項目にマッピングすべきかを考えるには,専門家の知識が求められます.

また,アートコモンズの展覧会情報はChasenで形態素解析され,必要と思われる語彙をメタデータとしてGETAに食わせることで想 - IMAGINE Artsでの検索を実現しています.ここでは形態素解析の結果から必要語彙を抽出し辞書を作成する作業はやはり専門家が行うことになります.

専門家が用意したマッピングパターンや語彙は,一般ユーザが行ったそれと比べ,信頼性が高いのは事実です.しかし,専門家と言えども人間が行うそれらの行為には,どうしてもマッピングのずれ(本当に正しい対応が取れているか)や,必要な語彙のずれ(本当に必要な語彙が選定されているか)が生じると思われます.

また,今回の論文では取り上げられていませんでしたが,博物館系のメタデータには,これまで他の投稿記事で述べた通り,世界的あるいは国内の標準と呼ばれる形式があります.これらの標準メタデータ形式を中間形式としてデータの相互変換を行うことも考えられますが,やはりキッチリやろうとすると,上述のようなずれが生じやすくなります.

このようなずれを解消するためには,キッチリとしたメタデータの運用(ある特定のメタデータ形式にマッピングするとか,必要な語彙を選定する,等)はさほど重要ではないのかもしれません.つまり,各館が管理するデータベースのスキーマを,インターオペラビリティの確保を前提に,緩やかに分解統合できるような仕組みが必要になるのだと思います.

そのような仕組みについて考えていることがありますが,それはまた次回^^

CERCA TROVA

日テレ「天才ダ・ヴィンチ 伝説の巨大壁画発見!」を見ました.
と言ってもたまたま見つけたので,1時間過ぎているあたりからの視聴です.

内容はだいたい以下のような感じでした.
美術解析学者のマウリッツィオ・セラチーニ博士は30年前、フィレンツェにあるヴェッキオ宮殿の広間を調査中、「五百人広間」を飾るヴァザーリの壁画の中に『CERCA TROVA』(探せよ、さらば見つからん)と書かれた小さな旗を見つけた。それは、500年前に失われたはずのダ・ヴィンチの巨大壁画「アンギアリの戦い」が、まさにここにあるという暗号であった。市当局の許可を受けた博士は、X線やレーダーなどの科学技術を駆使し、ヴァザーリの壁画を損傷することなく、その壁画の後ろに2cmほどのすき間があることを確認。さらに「アンギアリの戦い」の絵の輪郭や、絵の具の色まで解析している。

どらく2008.04.08,荒俣宏氏コラム

Seracini氏はEDITECHの中心人物で,カリフォルニア大学サンディエゴ校でCISA3というプロジェクトをやっているそうです.チラリと日本人スタッフも出てきて,おお,こんなところでも頑張っている日本人がいるのだなと少し感動しました.

なんだかいろいろ面白そうなことをしているようです.今度,もっと丁寧に見てみようと思います.

参考URL

コンタクト情報

お知らせです.

コンタクト情報をサイドバーに付けました.
メールは晒すとスパムが多いので,画像にしてあります.
画像はE-mail icon generatorで作りました.

CRM: The CIDOC Conceptual Reference Model(1)

前回,ICOM/CIDOCの取り組み(2)で博物館情報用のデータモデルについて簡単に触れました.特に,「概念参照モデル」(CRM: the CIDOC Conceptual Reference Model)については以下のような説明を加え,

CRMとは,一言で言うと「オントロジを用いた情報記述の枠組み」になります.これまでの提案のようにスキーマ設計の指針(具体的なフィールド名等)となるガイドラインとは異なり,文化財に関する基本概念をオントロジを用いて記述するのです.

オントロジとは,これまた一言で言うならば,「分類体系と推論ルール集」になります.世界にあるモノを体系的に分類し,それらの関係性を記述するものがオントロジです.具体的には諸々の書き方がありますが,CRMではRDF/XMLを利用することになります.

更に,RDF/XMLについてエントリしました.

今回は,RDF/XMLに基づくCRMの詳細について書いてみたいと思います.

CRMの考え方

CRMは,「データベースにどのような情報(フィールド名)を記述すべきか」を言及したものではありません.文化財の管理に対して,既に何らかのデータベースが動いている状態を前提としており,これらのデータベースから,洩れがなく,かつ発見的にデータを統合・交換するための「枠組み」を提供しようというものです.

例えば,ある所蔵品管理データベースでは,管理項目として「作品の名称」「作者」「年代」が管理されているとします.CRMでは,「「作品の名称」は「作者」によって「年代」に作られた」といったような項目間の関係性(RDF/XMLの文)を作り,このデータベースが持つ情報に意味を与えます.他方,別の所蔵品管理データベースでは,「作品の名称」「出処」「関連文献」が管理されているとします.CRMでは「「作品の名称」は「出処」で見つかり,「関連文献」がある」といった関係性を作り,このデータベースが持つ情報に意味を与えます.双方の文をマージすると,「「作者」によって「年代」に作られた「作品の名称」は「出処」で見つかり,「関連文献」がある」という文になり,双方のデータベースが無理なく統合されるわけです.また,それぞれのデータベースから見れば,新たな項目が発見されたとも言えるわけです.

実際にはデータベースはもっと複雑な構造をしており,また管理項目も多種多様です.しかし,概念(上の例ではデータベースの管理項目.ただし概念=管理項目ではない)の関係性を表現し,その関係性を用いてデータの統合や交換の実現を目指したものがCRMと言うことができます.

具体例

では,以下にCRMの例を示します.これはDefinition of the CIDOC CRMのサンプル例を参考に作ったものです.

CRMの最新バージョンは,2008年4月12日現在,4.2.1(あれ? 少し前に調べた時は4.2.2だったような...)で,84のエンティティ,141のプロパティが定義されています.CRMではドメインで使用される概念クラスをエンティティと呼び,エンティティ間の関係をプロパティと呼びます.



この例では,空間情報(文化財の所在)を表現するため,
  • E39 Actor(行為体:個人・グループ等,資料に関わりを持つ人)
  • E51 Contact Point(問い合わせ先:メールアドレスや電話番号,住所等)
  • E41 Appellation(呼称:名称.数値や文字列等)
  • E53 Place(場所)
  • E70 Things(もの:識別可能な単位)
の5つのエンティティを中心に複数のエンティティが階層構造で表現され,かつその関係がプロパティで記述されています.

ツール

CRM本家のToolsでは,各種ツールが公開されています.

可視化ツール(svg file)
  • CRMで定義されるエンティティとプロパティを,ICS-FORTH RDF Suiteを使い,SVGで表現するツール.
  • ブラウザはIE(とAdobe SVG Viewer)を用いないとパースエラーが出るので注意.
  • CRMのバージョンは3.2.
変換ツール
  • XML to RDF translator(zip-file)
    • XMLからRDFに変換するツールを用い,CRMと互換のあるRDFを出力する.
    • コマンドラインベースのツール.シンプルで良さそう.
  • CRM-XML mapping Utility(zip-file)
    • Accessで作られたツール.
    • 設定がよくわからない.設定をスキップして実行しようとしたら OLE サーバと ActiveX コントロールのエラーが出た.
チュートリアル(マッピング関係)
まとめ

今回は,まずCRMの考え方を示しました.次に具体例とツールの説明を交えながら,CRMの概要について書きました.次回は実際にツールを使い,どのようにデータを作っていくのか書いてみたいと思います.

参考文献

  • 本家
    • Definition of the CIDOC CRM
    • Definition of the CIDOC object-oriented Conceptual Reference Model
    • Definition of the CIDOC object-oriented Conceptual Reference Model and Crossreference Manual

文化財の輸送

先日(年度末なので,だいぶ前...),東京国立博物館「国宝 薬師寺展」を見てきました.

さすがに日光月光は(見ている人も含めて)すごい迫力でした.私が気に入ったのは特に背中.丸みを帯びて,優しい感じがしました(普段見ることができないという思いがそう感じさせたのかもしれませんケド).ただ,会場が全体的に赤っぽいデザインでなんとなく見づらかった.あれは昔のお寺をイメージしているのかしら.ライティングとか絶妙だっただけに個人的には赤い柱は邪魔だったなぁ.

それはそうと,この仏像たちは,はるばる薬師寺から上野までやってきたわけですが,輸送にはとても気を使ったことでしょう.

たまたまテレビを見ていたら,日光月光が日本通運のトラックで運び出されている様子が映っていました.日本通運はこの手の輸送には定評があるようです.


また,最近はあまり広報していないようですが,過去にはこんな広報がありました.


そして,驚きなのは厚生労働省が行っている「現代の名工」という卓越した技能者に送る賞を取ってたりするんです.2回も!


うん.

なんか日通の回し者っぽくなってきちゃいましたね.でも,現代の名工で美術品梱包輸送技能者が選ばれたのはこれまで日通しかいないそうです.

今回は日通の宣伝(!?)がメインになってしまいましたが,今度は保険や輸送時の技術(揺れの吸収とか湿度・温度管理等)についてもいろいろ調べてみたいと思っています.

ディジタルアーカイブの長期利用に関するシンポジウム

3/14(金),筑波大学まで行って来ました.IPSJの全国大会が開催されており,活気を帯びていましたが,学び舎は古くなり,やや疲れた感じがしました.

お目当ては以下のシンポジウム.

ディジタルアーカイブの長期利用に関するシンポジウム

プログラム

13:00 - 15:00 講演
  • Short Introduction, Heike Neuroth (Goettingen State and University Library, Max Planck Digital Library Berlin)
  • Organizational Issues: Trusted Repositories/Archives, Policy. Stefan Strathmann (Goettingen State and University Library)
  • Technical Issues: kopal, repository systems, ingest, validation. Heike Neuroth
15:30-17:00 ディスカッション(ラウンドテーブル)
  • ゲッチンゲン大学+国立国会図書館+国立公文書館+筑波大
後半のディスカッションが見所かと思いますが,ディスカッション前の休憩時間に恩師を訪ねたのが運の尽き.久しぶりの再開に話が弾んでしまい,後半まるごとブッチしてしまいました.何しに筑波まで行ったんだか...ま,恩師の元気な姿が見れたから良しとするか.

なので,今回の投稿は前半部のみです.

Short Introduction, Heike Neuroth (Goettingen State and University Library, Max Planck Digital Library Berlin)

Organizational Issues: Trusted Repositories/Archives, Policy. Stefan Strathmann (Goettingen State and University Library)

Technical Issues: kopal, repository systems, ingest, validation. Heike Neuroth
  • 当面の課題
    • ディジタル情報は元来複雑
    • 個人の要求は全く異種
    • 一般的な品質の評価基準は抽象的
    • フレームワークは実装レベルと程遠い
    • リポジトリソフトは複雑
    • システムの品質は個々の設定に大きく依存する
    • 製品のドキュメントは依然問題
  • Decision Process
    1. 参照モデル,技術,ユースケースから評価基準カタログ(Criteria Catalog)を作る.
    2. 市場のアーカイブ製品を調べる.
    3. 1,2をRatingし,製品比較を行い,ランク付けをする.
    4. 3と併せて個々の要求分析等を行い,
    5. 製品を選定する
  • 評価カタログの詳細(やや手抜き)
    • カタログ構造
    • 一般的な属性
    • 機能的な属性(取り込み,アクセス,ストレージ,アドミン)
    • 非機能的な属性(コスト,品質)
  • 具体例

前半戦 質疑
[Q]アーカイブへの多様なアクセスはどう考えている?
[A]アーカイブ用とアクセス用は分けて考えたほうが良い.

[Q]州と大学の図書館ということだが,州図書館としての役割は?(リポジトリシステムの中には高いものもある.)
[A]システム導入時のコンサルティング代行,システムレンタル等の運用を通して市町村等予算の少ない図書館のサポートができたら良いと考えている.

[Q]TRAC,DRAMBORA,nestorの違いを教えて欲しい.
[A]nestorとTRACは自己評価用.DRAMBORAはリスク評価用.

[C]ディジタルアーカイブは,評価・選別・廃棄のサイクルが大事.永久に残すものとそうでないものに分ける必要性を感じた.

[Q]アクセスフォーマットはネットワークのものとアーカイブのものは異なるのか?
[A]異なる.例えば,原本はtiffで,公開はjpgで,のように.

[Q]原本をサポートするツール(読みづらい昔の文字を現代の文字に変換するスクリプトのようなもの等)を用いる場合があるが,これもアーカイブの対象か?
[A]対象だ.ただし,原本とツールは異なることを理解する必要がある.


後半のディスカッションの前に,国立国会図書館のディジタルアーカイブの話と国立公文書館のディジタルアーカイブの話があったかと思われます(資料は手元にある).しかし,先の説明の通り,講演を聞いていないので,今回は割愛させて頂きます.

ETV特集「フィールドへ異文化の知をひらく」を見る

先ほど,国立民族学博物館文化人類学に関するテレビ番組を見ました.


直接的に博物館情報学とはリンクしないかもしれませんが,異文化/多文化を理解し,共生するための手法である「文化人類学」は,様々な異種データ群をメタデータを介して交換・統合していく世界と似たものを感じ,またそういう世界は博物館情報学の一側面であると感じたので,エントリしてみます.

残念ながら,途中(22:30くらい)からの視聴なので,前半部はどういう放送だったのかわかりません(^^; 以下,後半部のまとめです.

■研究する側される側の関係
  • 例1:アイヌの踊り(=文化)を博物館を介して発信する.
  • 例2:ペルーの博物館は日本人が建てて,運営は地元の人.
  • 遺物(の意味)とは,語り/昔の言い伝え/地元の人々の記憶等との併せて考えるもの.また,その活用も大事.
  • 風土を作るには,土の人(→地元民)と風の人(→旅人)がお互いにいい影響をしあうことが大事.
  • 他者との関係・認識のあり方は,対話・時間と空間の共有を通して少しずつ変わっていくしかない.
■異文化理解・多文化共生を深めるには
  • 松園さん
    • 文化人類学者は土地に入り,土地の人達とともに生活をする.最初は土地のことがよくわからないが,だんだん分かってくる.謎解きの面白さのように,忍耐強く,人に寛容である必要がある.
  • 鷲田さん
    • 異文化理解や多文化共生には,他者と考えや気持ちが同じになるということではない.むしろ,交われば交わるほど,お互いの差異が際立ってくる.そしてその事実を受け入れることが大事.フィールドワークを通して,他者の世界観を身体的な感覚で汲み取ろうとするのは重要なこと.
  • 関野さん
    • 文化相対主義とは,上下関係ではなく,文化を相対的に見るもの.
  • 松園さん
    • 多文化共生への努力は,様々な味付けの料理を食べられるということ.

■広がる研究フィールド
  • 例1:タイ・ランプーンにおける日本文化とタイ文化の比較,平井京之助さん
    • 1980年末に日本企業のエレクトロニクス関係の工場ができたことによる,周辺地域への影響について調査.
    • 異文化が地域に与える影響(いい面も悪い面も含めて)を調べることで,双方が良くなる手助けをする.
    • グローバル化→文化人類学のフィールドの広がり→調査対象と研究対象/内容が広がる.
  • 例2:パプアニューギニアの津波(1998)と新潟県中越沖地震(2004)を通した,災害の復興調査,林勲男さん
    • パプアニューギニア津波では,支援がNGOの名声のために利用されたり,パプアニューギニア文化を無視した支援が一部であった.
    • 新潟では,被災者個々人の思いを聞いて回り,体験記録集の作成した.このような記録は震災の教訓・知恵を次の世代に伝える手助けとなる.
    • ネットワーク作りの大切さ:地元外NGO+地元=復興の企画等(震央米).
    • 林氏の目指すところ
      • 防災を含めた人々の安全な暮らしの確保を考える.
      • 行政,ボランティア,研究等様々な立場の人が知恵を出し合って取り組む分野.
      • 文化人類学的には,災害現場の状況理解をまとめ,次世代に伝えることが大事.
  • 例3:医療分野や開発協力への適応,白川千尋さん
    • マラリアの感染には有効予防接種がないので,蚊帳が有効だが,現地では多くの人が蚊帳を使ってくれなかった.
    • 蚊帳を配るだけでなく,それを使ってもらえるような方策を考えることが大事.
    • 現地には多様なニーズがある.それにあったきめ細かいサポートを提供するため,対象者のありようをきめ細かく見ておく必要がある.ここで文化人類学的な視点が重要で,「開発人類学」が形成されつつある.
    • 開発を成功させるためのブローカーになるのではなく,以下が大事.
      1. 地域の社会情報・文化情報を提供し,
      2. 常識を別の角度から見直して相対化する.
■文化人類学の課題
  • 鷲田さん
    • 今の文化人類学
      • グローバル化→複雑なファクター/コンテキストが絡み合っている.
      • コンテキストの多層性・多次元性→文化を多元的に調べる.
    • この状況で,文化人類学は野生的でなくなってきた.
  • 松園さん
    • 文化人類学は長い歴史の中で全体として人間を見る.現代は対象の外から様々な要素が入り込み,対象が複雑になっている.その状態で文化人類学者は刻々と移り変わる対象に目を奪われ,長いスパンで考えられにくくなってきている.これは問題だ.
  • 鷲田さん
    • そうは言っても,複雑性への感覚はスゴイ.繊細なコンテキストへの意識はスゴイ.
  • 関野さん(まとめ)
    • 人間とは何か,私とは何か.
    • 世界中にくまなく広がり,環境の中・文化の中で人間とは何かを明らかにする.
    • 環境/紛争/資源等々の問題にも文化人類学的手法は有効.

参加シンポジウム等の整理

年度末ですし...

2003年末頃から参加した研究会やシンポジウムをピックアップしてみました.

当時のメモを元に,ヒマを見ては詳細や私見を公開して行こうと思っています.アップは当時の日付に併せて行うと思いますので,都度新しいエントリとしてご紹介します.

既にこのblogで紹介したイベントに関しては,ここのblogのリンクを貼っています.

■2004年■2005年
■2006年
■2007年
■2008年

あれ...なんかもっといろいろ参加した気がするんだけどなぁ...

画像電子学会 第6回 画像ミュージアム研究会

2008/2/29(金),画像電子学会の第6回 画像ミュージアム研究会(pdf)に行って来ました.

発表は4件と少なめながら,非常に有意義な議論に参加することができました.

以下,参加レポです.

※レポはryojin3の所感であり,講演者の意見・意図が100%反映されているとは限りません!その点ご注意くださいませ.

※今回は,有料の研究会だったため(資料代なので問題ないとは思いますが),内容については簡単にしか書いていません.詳細は画像電子学会Webサイトもしくは研究会Webサイトでご確認下さい.情報があまりないかもしれませんケド...



報告
  • タイトル:Font Museumの公開
  • 著者(○は発表者):○長村玄,小町祐史,上村圭介:情報規格調査会 SC34/WG2小委員会)

  • Font Museumについて.その問題意識や意義について.
    • 実際の活字の収蔵の問題
    • 活字のディジタル化の問題
    • ディジタル化することによる著作権の問題
    • ビジネスの方向性,等



報告
  • タイトル:進化計算アルゴリズムの視覚化と展示への応用
  • 著者(○は発表者):○田島悠史,桐山孝司:東京芸術大学大学院映像研究科




報告
  • タイトル:土器画像検索システムと展示への応用の検討
  • 著者(○は発表者):○茂呂優太,徳永幸生,杉山精:芝浦工業大学

  • 以下の超2次関数を使って,土器画像から特徴パラメータを取得し,補助パラメータ(ここでは省略)と合わせて土器画像を分類検索するシステム.
  • 上式において,各記号は以下を表す.
    • a1,a2,a3 は xyz 各軸における長さ
    • ε1,ε2 は xz・xy 各平面における角張り具合
    • k1,k2 は z 軸方向の先細り度合い
    • y = 0 として上式を使用している.
  • この式は,国立歴史民俗博物館の土器画像 200 枚に適用.
  • ペン入力やテンプレートを選択できるような UI を用意し,入力値と特徴を比較,適合結果を返す仕組み.
  • 国立歴史民俗博物館企画展示「弥生はいつから!?」で実証実験.
  • アンケートで評価.



報告
  • タイトル:部分的分類知識の統合による博物館情報の横断検索の提案
  • 著者(○は発表者):○山田 篤,小町祐史,安達文夫:京都高度技術研究所,大阪工業大学,国立歴史民俗博物館
  • 博物館同士の情報交換(横断検索)が目的.
  • 各館の分類知識を統合するポータルサイトを作って検索するのが望ましい.
  • 各館の分類知識の統合方法は,
    • 特定ジャンルの複数のコレクションに含まれる資料名称をもとに,分類語彙を設定.
    • 分類語彙中,他のコレクションと共通で現れた語がキー.
    • コレクション同士の類似度は以下の式で計算する.
      • AとBの共通語彙数×2 ÷ (Aの語彙数+Bの語彙数)
  • 類似度から見えてくるコレクションの関係を分析.
  • 今後は,分類知識の修正や更新の仕組みや,具体的な横断検索の仕組みを検討.