戦後の記録映画を残せ

記録映画保存センターのブログで紹介されていましたが,2/21(土)のNHKおはよう日本で記録映画の保存について小特集がありました.

7:35から10分程度だったわけですが,土曜日の朝早くに起きられるわけもなく(!?),録画しておいたものをゆっくり見させて頂きました^^

以下,簡単なメモです.

記録映画とは
当時の世相を伝える貴重なもの.例えば,以下等.
  • 佐久間ダム総集編(1958) → 戦後の経済復興を伝える
  • 水俣 ~患者さんとその世界(1971) → 公害の姿を伝える
現状
横浜のフィルム現像会社を例に,記録映画保存の現状が紹介されました.フィルム現像会社では,映画制作会社のフィルム原版を保管しています.しかし,管理のためのスポンサーが付かず,現状原版は放置されている場合が多いようです.このような放置原版は国内に約5万本,うち30%は記録映画だとされています.

問題点
基本的に放置なので,フィルムの保存状態が悪く,劣化する例が多く見受けられるそうです.例えば,高温・高湿度のためフィルムにシワが寄ってしまったり,フィルム同士がくっついて塊のようになってしまう場合があります.

これらの問題に対し,現像会社でも何らかの手を打ちたいところだそうですが,所有者の許可なく修復保存・廃棄・もちろん二次利用もダメで,対策が打てないのだそうです.

取り組み
そこで,国立近代美術館フィルムセンター 相模原分館では,後世に伝える貴重な記録映画の収集を行うため,所有者の確定と同意を取る作業を続けています.フィルムセンターでは,気温5度,湿度40%を保ち,フィルムが500年は耐えうる保存環境が整っているそうです.

また,記録映画保存センターの村山英世氏が中心となり,記録映画アーカイブプロジェクトも立ち上がっています.氏曰く,このプロジェクトは個人やプロダクションが保管管理する記録映画を公共・国民のものにするためのプロジェクトだそうで,まず第一弾として,日立製作所が持つ「岩波映画製作所」フィルム原版群のアーカイブプロジェクトが企画されています.岩波映画製作所は平成10年に倒産しましたが,これまでに4000本・1億フレームにのぼる映画が残されています.代表的なものには,「雪の結晶(1953)」,「教室の子供たち(1954)」等があります.

センターでは,これらのフィルムから所有者を探し出し,寄贈依頼を行うという地道な活動を続けており,これまでに80%程度は寄贈に同意を得られたそうです.

村山氏は,最終的にはアメリカの「映画保存法」のような仕組みを作らないと解決できないと考えています.持ち主が現れない場合は国に寄贈するという仕組みが作られれば,現像会社で朽ち果てるのをただ待つだけのフィルムが蘇るのかもしれません.

プロジェクトには,映画監督の羽仁進氏も参加されたようで,「フィルムにはその時代でないと記されないものがある.そのため記録映画の見直しには意味がある」旨,語られていました.

活用の取り組み
フィルム・アーカイブはフィルムを保存するのみならず,それを活用する環境ができて初めてフィルム・アーカイブと呼べます.番組では,以下の2つの事例を通して活用に向けた取り組みが紹介されていました.
  • 台東区忍岡中での理科授業
    • 理科の授業で50年前の科学映画を活用.映画自体の質がいいので効果的.科学法則は原則変わらないので古くても使える.
  • デイサービス施設での記録映画上映
    • 高齢者に古い記録映画を上映し,古い映像を通して思い出を語り合ってもらう.
    • 記憶を呼び覚ましてもらうことで認知症予防等に活用.
所感
短い特集でしたが,さすがNHK,内容がまとまっており現状の問題点と取り組みがよくわかりました.ryojin3的にはフィルムをアーカイブするうえで欠かせない(はずの)デジタル処理についても紹介があると面白かったのになぁという感想です.また,NHKでは川口で大々的にアーカイブの取り組みをやられているので,そことの関係や連携(あるのかな)等も知りたかったところです.

Europeana徹底解剖

昨年末,公開と同時にアクセス過多で一旦サービスを停止するという事態に陥った欧州デジタル図書館「Europeana」.サービスが再開して2ヶ月近くが経ちました.そろそろシステム的にも利用状況も安定してきたのではないかと思い,ちょっといろいろ調べてみました.今回はそのまとめです.

■経緯
以下は,Current Awareness PortalITMediaCNET Japanから拾って時系列に並べたニュース記事です.網羅的に集めたつもりですが,検索漏れがあるやもしれません^^

2005年
2006年2007年2008年
■協力組織
2009.02.15現在,108機関.まぁこう見ると意外と少なく感じますが,国の代表(National representatives)には各国を代表する図書館等が名を連ねています.
  • Archives 12件
  • Audio-visual collections 7件
  • Cross-domain associations 12件
  • Libraries 14件
  • Museums 11件
  • National representatives 26件
  • Other 2件
  • Project Contributors 12件
  • Research institutions 12件

■言語

ヨーロッパ中心の25ヶ国語にI18Nされています.
  • Catalan
  • Bulgarian (bul)
  • Czech (cze/cse)
  • Danish (dan)
  • Dutch (dut)
  • English (eng)
  • Estonian (est)
  • Finnish (fin)
  • French (fre)
  • German (deu)
  • Greek (ell/gre)
  • Hungarian (hun)
  • Icelandic (ice)
  • Irish (gle)
  • Italian (ita)
  • Latvian (lav)
  • Lithuanian (lit)
  • Norwegian (nor)
  • Polish (pol)
  • Portuguese (por)
  • Romanian (rom)
  • Slovak (slo)
  • Slovenian (slv)
  • Spanish (esp)
  • Swedish (sve/swe)

■機能

  • 検索
検索窓1つのGoogle方式.Advanced searchを選択すると,(「Any fields」,「Title」,「Creator」,「Date」,「Subject」)×3を(AND/OR)で検索できます.
  • My Europeana
登録ユーザの検索結果の保存,タグ付与,友達への紹介,等ができるらしいが,まだ登録も利用もできないようです.
こちらもデモがあるのみ.コンテンツの共有や再利用についてのアイデアを議論する場としてCommunitiesが用意されるようです.デモを見てみると,SNSのような運用を想定しているようです.
下側に作品の多さに比例して大きさの異なる西暦が並び,各西暦をクリックすると上側に作品が出てきます.上側に出てくる作品は横スクロールバーの動きに合わせてブワーっとフローして行きます.iPhoneのマルチタッチに近い動きか.驚いたのは,普通こういうのってFlashで作ると思うんだけど,全部JavaScript!なんとも….まだまだベータ版らしく,左側の検索窓から西暦を入れて検索すると,検索結果の西暦は大きさが変わらなかったりしますが,まぁご愛嬌.
実験的ラボ.大学や研究機関,コンテンツプロバイダと協力し,Europeanaの持つコンテンツを素材に実験的な機能を試していこうというラボです.今のところ,プロトタイプのSemantic Searchが公開されています.MultimediaN N9C Eculture projectThe ClioPatria semantic search web-serverで動いているようです.これについてはEuropeanaのSemantic Searchのインターフェースも含め,別にもっと詳しく調べたいと思っています.

■コンテンツ

  • 概要
Europeanaは検索の窓口です.検索結果のサムネイルはEuropeanaのイメージサーバにキャッシュされているようですが,コンテンツ本体は参加機関のサーバから再生されます.従って,全てのコンテンツに関するコントロールと権利保持は各参加機関で行うことができます.
  • 資料件数
約200万件
  • フォーマット
フィルム,写真,絵画,音楽,地図,原稿,書籍,新聞,etc.
  • 将来的な話
2010年までに現在の200万点から,1000万点アイテムの完全公開を目指すそうです.そのため,実際にEUはデジタル化資金を拠出しています(Current Awareness Portal,2008.12.04).また,今はコンテンツの登録を文化組織に限定していますが,将来的には個人の所蔵等も登録公開できるような仕組みを作って,コンテンツの幅を持たせたいようです(INTERNET Watch,2008.11.21).

■相互運用性
詳細はEuropeana/EDLnet conference: Users expect the interoperableにあります.


■メタデータ

基本的にはQDC(The Qualified Dublin Core)のようですが,一部拡張もされています.詳細な仕様はMetadata elements in the Europeana prototype(pdf)にあります.

拡張エレメント
  • <dc:relation>のサブプロパティとして<europeana:isshownby>
  • <dc:relation>のサブプロパティとして<europeana:isshownat>
  • <europeana:usertag>

■閲覧

せっかくなので実際に有名なコンテンツを見てみました

いやぁ,全然徹底解剖してないけど,疲れちゃった.今日はこれくらいで.次は今回息切れが著しい相互運用性やメタデータ,セマンティック関連を中心に調べたいと思っています.てか,むしろそっちが専門に近いだろうに….

近代化産業遺産とアノテーション

地域コミュニティサイト「Lococom」"近代化産業遺産"特集サイトができたようです.
近代化産業遺産とは,経済産業省が認定する文化遺産群のことで,日本の産業近代化に貢献した建物や機器類の保存活用を目的としています.2007年度には,地域史・産業史を軸とした33のストーリーとそれに関連する575件の産業遺産が認定されています.
今回は経産省の「地域経済産業活性化対策調査」事業の一環で,Lococomを運営する株式会社ネクストが受託開発を行ったようです.そこでは,以下のような効果が期待されています.
  • コンテンツ掲載による,広範囲な近代化産業遺産の認知
  • 地元からの情報発信とクチコミ化による地域の活性化
現在は検証フェーズのようで,情報提供やクチコミを行うことの有効性・ビジネスモデルについて検討が行われているようです.

また,サイトにはモデル地域の特集ページも用意されています.群馬県桐生市をモデルに,近代化産業遺産コンテンツの提供のほか,商工会議所等と連携した観光情報(宿泊,飲食,施設,イベント情報等)が提供されています.

経産省のサイトから産業遺産のリストを入手できますが,せっかくなのでLococomの特集ページを使ってどのような遺産があるのか見てみたいと思います.特集ページではLococomが持つ機能(遺産の検索・閲覧・クチコミ投稿・クチコミ閲覧等)がそのまま使えるようになっています.

主な近代化産業遺産(順不同,ryojin3の興味順)
経産省では2008年度も引き続き前年度と異なる分野で「近代化産業遺産群 続33」として認定を行っており,こちらもLococomで公開予定だそうです.また,ネクストの受託は2009年3月末までですが,コンテンツは4月以降も掲載するそうです.これら一連の動きは,経済産業省 経済産業政策局の活用委員会の議事(ページの一番下)を参照することで詳細情報が得られます.

さて.このような事例は,文化遺産情報にアノテーションを活用する好例なのではないでしょうか.

あるデータに対し,注釈データ(メタデータ)を付与することをアノテーションと言います.Java使いならご存知,クラスやメソッドに入れる,アレです.エラーチェックや加工はしませんし,「注釈」は定義が広いので一概には言えませんが,遺産情報(あるデータ)に対するクチコミ(注釈データ)はアノテーションの一種と考えられます.

アノテーションについては様々な研究が行われているようです.以下はざっと調べた一部分です.他にもたくさんやられてそうです.

消費者生成メディア,いわゆるCGMが取り入れられているeコマースサイトでは,アノテーション,つまりクチコミは商品情報同様にサイトの中心的なデータになりつつあるようです.

クチコミは売りたい側の意図を反映しない純粋な消費者の声であり,確度の高いマーケティング情報源としてここ数年その収集方法や解析方法を中心に注目を集めています.

遺産情報に対するクチコミは,eコマースサイトにおけるクチコミのように直接商品にフィードバックがかかる類のものではありませんが,それなりに重要な意味を持つかと思います.なぜなら,クチコミは観光情報として活用できるからです.

観光情報として活用が見込まれるということは,平たく言えば地域の経済活性化につながる呼び水になりうる,ということを意味します.恐らく用意されているシナリオは(こんなに単純ではないでしょうが),サイトに地元情報を発信→サイト閲覧による観光客の獲得→観光客のクチコミ書き込み→クチコミ情報を閲覧した更なる観光客の獲得,,,のような感じでしょうか.

実際には,サイト自体の周知(SEO,宣伝/広告),クチコミを増やす方策(その遺産のぬしとなるような人を(お金を払って)サイト側で育てる等),地域情報のこまめなアップデート,他の類似サイト(旅行サイトや地図サイト)との差別化,等など,考えなければならない点が山ほどあるでしょう.

また,集計やマイニングのことも考え,クチコミをGDAのようなXML形式のアノテーションで集めておくことも大事かと思います.クチコミからの知識発見にはXMLのようなデータ表現は役立ちそうです.

最後に.どうでもいいことですが,このサービスで残念なのは遺産のページから貼られている「公式ページ」へのリンク.これ,順次入れ替えて行くんだろうけど,今のところどの遺産を見ても経産省のページにリンクが貼られています…orz

Google Earth

新しく入れたGoogle Earthが楽しくて,いろいろいじっていました.

先日のプラド美術館は KML + Google SketchUp + αで作られているようです.

Google Earthはリリースされて時間が経っていますので既にご存知の方も多いでしょうが,ちょっと説明.

KML(Keyhole Markup Language)とは,Google EarthやGoogleマップ上に地理的な情報(目印とか,地名とか)を配置するためのXMLボキャブラリのことです.2008年にはOpenGIS KML Encoding Standardとして,OGC(Open Geospatial Consortium)標準となっています.

また,Google SketchUpとは3Dモデリングシステムのことです.SketchUpには利用可能なデータ形式にKMLやKMZ(KMLを圧縮した形式)があり,写真からモデルを起こす機能もありますので,恐らく,プラドは写真をSketchUpで3Dに起こし,KML化してGoogle Earthに登録しているのでしょう.

+αと書いたのは,Earth上のプラド美術館モデルには,画像一覧が出てきたり,画像の詳細が閲覧できる部分があることを指しています.ここはどうやって作っているのかわかりませんが,スクリプト言語とKMLの画像指定(href,NetworkLink等),SketchUpの写真貼り込み機能あたりを組み合わせて作ってるんでしょうかね.

せっかくなので,プラドをブラウザに埋め込んでみました.表示するにはブラウザ用プラグインが必要です.

Google earthでプラド美術館

Google Earthでスペイン・プラド美術館の超高解像度写真が閲覧できるレイヤーが出ました.

主なリソース


今まで使っていたマシンは非力でGoogle Earthがうまく動かなかったので保留してたのですが,そこそこハイスペックなマシンを手に入れたので,早速試してみました.

まずはGoogle Earthをインストール.最近はGoogle Updaterという統合管理ツール?でGoogle関係のソフトは管理されてるんですね.残念ながら,自分の環境ではUpdaterがうまく動かず,個別にDLしましたが….

まずは左下の「レイヤ」の「建物の3D表示」にチェックを入れ,ジャンプで「プラド美術館」を検索します.



お,プラド美術館のところがセカンドライフチックになってます.少しずらして見てみます.



プラド美術館上でクリックすると,一瞬建物が青くなって,Masterpieces(画像一覧)が出てきました.現在は全部で14点が掲載されているようです.



せっかくなので「三美神(The Three Graces)」を選択.画像とメタデータが表示されました.解説文も付いており,下側「Continue reading」から詳細な解説を読むこともできます.



メタデータはこんな感じ.

 Author: Rubens, Peter Paul
 Catalog n. P01670
 Technique / Support: Oil / Wooden Panel
 Dimensions: H. 221 CM W. 181 CM
 Date: Ca. 1635
 Subject: Mythology. Gods
 Provenance: Royal Collection
 School: Flemish
 Object type: Painting
 Displayed in: Villanueva Building - Room 9 (On Show)

邪魔なのでサイドバーを消してから更に細かく見てみます.よく見ると,画像の下に「Browse this picture in ultra high resolution (the world largest pictures)」というリンクがあります.the world largest picture ですか.スゴイ.14G pixelらしいです.

で,これを選択すると,ググっと画面が動き,建物内部に入っていきます.そこでは背景が深い青になり,画像のみが表示されます.右上にマウスポインタを動かすと,写真を拡大縮小できる操作メニューが現れます.



操作メニューでは,画像全体のどこをフォーカスしているのかがわかりつつもどんどん拡大や縮小ができます.写真は拡大してみたところ.まだまだいけそうなので,最大限拡大してみました.



MAX拡大.右側の女性の髪の毛あたりです.さすがにMAXにするとボンヤリしていますが,絵画のひび割れ等細部を見ることができました.



画像を堪能したので,右上の「写真を終了」ボタンで美術館を抜けます.



え...ここに飛ばされるのか...どうせなら画像一覧に戻ればいいのに.ここからまた画像一覧に戻るのが面倒です.ま,これはryojin3がGoogle Earthの操作に慣れていないせいもあるだろうケド...



ここらへんまで引いて,建物か「MUSEO NACIONAL DEL PRADO」と書いてある白いアイコンをクリックすれば
再び画像一覧に行くことができます.

と,まぁここまでが一連の閲覧手順です.

以下,ryojin3の所感です.

今回の試みはどういう意図があったのでしょうか.プラド美術館の場合,2つの特徴が見受けられます.つまり,1) 超高精細画像の公開,2) ユーザアクセスが簡便なプラットフォームの活用,です.

前者は14G pixelと桁違いに大きな画像をよりセキュア(Google Earthがセキュアであるかどうかは本質的な議論ではありませんが,少なくともWebにポンと出すよりかはセキュアであると考えられます)な環境で見せている点が特徴的です.もちろん用途として閲覧のみならず美術研究の促進も考えられます.また,後者に関してはそのようなコンテンツをただ自館のサイトにアップするだけでなく,Google Earthというそれなりに人が利用しているプラットフォームを用いることでニュース性や露出度の高さ,Google Earthの持つ機能を利用できる点が特徴的です.

現状,プラド美術館の外装は昔のウォークスルー型仮想美術館のようですし,操作もそれなりに面倒です.しかし,絵画コンテンツの増加と操作性やユーザインターフェースが向上すれば,美術研究のみならず,教育用コンテンツとしてどんどん活用されていく気がしますし,プラド×Googleもそれを狙っているのではないでしょうか.

今回試した環境はたまたまリリース直後のGoogle Earth 5.0 betaでした.海中や火星の探索,タイムスライダーによる過去の画像閲覧が可能になっているバージョンです.このようなコンテンツと機能の充実ぶりに,ryojin3は,美術作品のみならず,自然科学,歴史学,その他様々な教育用コンテンツは地理情報やタイムラインと紐付きながらGoogle Earthに集約されていき,教育用プラットフォームとして活用されていく可能性を感じました.

Memory Maker



オークランド戦争記念博物館は,1852年に開館したニュージーランドの国立博物館で,戦争関係以外にも,歴史・自然史系のコレクションを持つニュージーランドの主要な博物館だそうです.

先日,この博物館が中心となり面白いCGC(Consumer Generated Contentって言葉あるのかな)サービスが公開されました.
ネタ元はCurrent Awareness(2008.11.17)です.
このサービスは,National Digital Forum(ニュージーランドの図書館・博物館・文書館の連合体)のプロジェクト「DigitalNZ」の一環であり,第1次世界大戦の休戦協定成立から90周年を迎える記念として公開されたようです.

仕組みは以下のようになっています.
  1. まずNational Digital Forumを構成する130を超える機関が大戦中の兵士の画像や音声映像等をコンテンツとして提供します
  2. ユーザはこのコンテンツ群を自由に組み合わせてFlashビデオ作品を作成し,Memory Makerサイトに投稿します.
  3. ユーザは投稿作品を TOP VIDEOS/LATEST VIDEOS という形で閲覧でき,
  4. 更にURL,Embed URL,Emailを通して共有することができます.
コンテンツの作成は非常に容易で,コンテンツ種別やエフェクト毎にタブ分けされたプレビュー画面から,タイムライン上(コンテンツ別にタイトル・ビデオ・オーディオ・音楽がある)にコンテンツをドラッグ&ドロップして組み合わせていくだけで最高1分の作品が作れます.

表 コンテンツの種別と数
フォーマット/エフェクトコンテンツ数
Video(映像)10
Audio(音声)13
Transitions(エフェクト)6
Titles(タイトル)21
Graphics(画像)計156
Music(音楽)20

DigitalNZ」ではMemory Maker以外にも,ユーザが作った各種ウィジットや開発者向けAPI,コンテンツ提供者向け情報を公開しており,2.0な世界を意識した作りになっています.

博物館を中心とするコンテンツホルダーがコンテンツを提供し,サイトはその利用環境(コンテンツ・API・各種ウィジット等)を提供する.ユーザはその環境下で複合的にコンテンツを利用する.利用するのみならず,自作のソフトウェアや他所のAPIと組み合わせてMash upしても良い.

このような試みは高く評価できると思います.日本国内にも歴史的・芸術的に見て価値のある様々な博物館系コンテンツがデジタルアーカイブという名の下で公開されつつあります.しかし,ユーザはその世界で検索と閲覧のみが許され,例えば教育用コンテンツの作成や芸術コンテンツの創作といった2次的な利用やその方法についてはあまり考慮がなされていない気がします.

ニュージーランドでは国が先導して取り組んでいるので予算が付くし,コンテンツの質も保証されているというアドバンテージがあると思いますが,コンテンツの利用という点では,このような試みは今後の新しいデジタルアーカイブを考える上で非常に参考になるのではないでしょうか.

アート・ドキュメンテーション学会 第1回 秋季研究発表会

2008年12月6日(土),アート・ドキュメンテーション学会主催の第1回秋季研究発表会に参加してきました.会場は印刷博物館.参加者には印刷博物館で開催されている企画展「ミリオンセラー誕生へ! 明治・大正の雑誌メディア」および総合展示ゾーン,VRシアター等の見学もできるチケット付きでオトクでした.

※レポはryojin3の所感であり,講演者の意見・意図が100%反映されているとは限りません!その点ご注意くださいませ.

基本情報
  • 日時:2008年12月6日(土)10:30 - 17:00
  • URL:http://www.jads.org/news/2008/1206.html
  • 参加者:100名弱?ちょっと自信なし
  • 参加者に対して会場がややせまい.3人がけの長いすに3人座る感じ

プログラム(敬称略)
  • 戦後新聞社主催展覧会資料の調査および収集の展望
    • 国立新美術館、日本美術情報センター 橘川英規
  • 文字を残すための序論的考察
    • 立命館大学グローバルCOE客員研究員 當山日出夫
  • 東京国立博物館の収蔵品管理システム
    • 東京国立博物館学芸企画部博物館情報課 村田良二
  • ファンドレイジングとドキュメンテーション
    • 東京都写真美術館 末吉哲郎
  • 版木資料のデジタル・アーカイブについて
    • 日本学術振興会特別研究員DC1/立命館大学アート・リサーチセンター 金子貴昭
  • 博物館図書室の業務と既存次世代図書館システムの機能
    • 総合研究大学院大学複合科学研究科情報学専攻 矢代寿寛
  • 英国V&A博物館とスコットランド国立博物館所蔵浮世絵のデジタルアーカイブ
    • 立命館大学アート・リサーチセンター 赤間 亮
概要
  • アート・ドキュメンテーション学会は博物館・図書館の資料管理部門(データベース利用やメタデータ作成)の人たちが主な聴衆
  • これまで学会では年1回2日間の年次大会を開いてきたが,発表件数が増えてきたので今回初めて研究会を開いたようだ
  • 最後のほうで幹事の方がおっしゃっていたが,研究会を開くに際して,まだ統一的な土台(基礎的な情報の共有)が薄く,発表の内容が研究よりもその背景説明に終始してしまう傾向が見られたようだ

各発表メモ

戦後新聞社主催展覧会資料の調査および収集の展望
  • 会場に到着した頃には終わりかけ・・・ここに書くほど理解できていませんので,割愛します
文字を残すための序論的考察
  • デジタルアーカイブをするなら,異体字の取扱いにも注意しようという話
  • 異体字を含むメタデータの検索では適合率が下がる
    • 表記揺れの吸収
    • シソーラスの整備
  • アーカイブ時の「文字同一性」が重要
  • JIS改訂に併せて,図書館では古いJIS本が廃棄される(!)
  • デジタルアーカイブの問題
    • ベンダ依存の文字コードの取扱いの難しさ
    • CD/DVD/HDD 等のメディア保存問題
  • 会場からの質問
    • PDF/Aと日本の現状の違い,特に制作の標準化について
      • ryojin3 は PDF/A をよく知らないので,あとで調べる
      • ISO化はされているらしい
    • 外国の古代文字アーカイブ
      • フォントデータ(もしくは画像)+コードポイント
      • 古代文字アーカイブってどう管理してるのかな
    • Google bookの動向
      • これも気になる.あとで調べる
  • 会場からのコメント
    • 歴史的文献研究では,研究の本質ではない部分で,意外と表記の揺れや古い表記等が気にならない場合がある
東京国立博物館の収蔵品管理システム
  • 情報処理学会第68回デジタルドキュメント研究会での発表を,今回の聴衆向けにModifyした感じ
  • 博物館では,中の人で設計・実装できる人は相当貴重.発表後もいたるところで質問されていた
  • 会場からの質問
    • MDA SPECTRUMとの違いは?
      • 東博独自のワークフローを分析してスクラッチから作っているのでSPECTRUMは参考程度
    • システムへの入力規則みたいなものはある?
      • 今後.揺れを吸収していく方向
ファンドレイジングとドキュメンテーション
  • 美術館・博物館での資金集めの話
  • 発表者はWBSにも出たことがあるらしい.なんとなくその時テレビ見てた気がする
  • 資金を出す企業のメリット
    • PR,CSR,社会教育の場として利用
  • 維持会員のメリット
    • 特別展のオープニングセレモニーに呼ばれたり → 顔つなぎで結構大事らしい
    • バックヤードを見れたり,あといろいろ
  • 資金の使い道
    • 作品・資料購入-- 国際交流(シンポジウム開催等)
    • 企画展運営費,あといろいろ
  • 評価
    • 日経の実力調査で評価されている
  • ryojin3の感想
    • もっとキチンとした対外評価基準はないのだろうか
    • ファンド集めとドキュメンテーションの関係がよくわからなかった
版木資料のデジタル・アーカイブについて
  • 版木資料は英語で「Japanese Wood Block」
  • 版木のデジタル化手法のアレコレを紹介
    • ライティング手法
    • カメラ選定
    • カメラ配置手法
    • 被写体配置手法
  • デジタル版木DBのアレコレを紹介
    • 主にメタデータの設計が中心
    • 版木を「柱台」中心にグルーピング?した設計
    • アクセス権限の話
  • 会場からの質問
    • DRMは?
      • 今のところ特にない
    • メタデータにある論文参照はどうやってやるの?
      • 論文へのリンクはNoteという項目からReferできる
博物館図書室の業務と既存次世代図書館システムの機能
  • スライドが黄色い! プロジェクタの出力ミス?
  • 博物館図書室
    • 専門図書館の一種
    • 専門図書館の定義(ALA図書館情報学辞典より)
      • 組織の目標を追求する上で、そのメンバーやスタッフの情報要求を満たすため、営利企業、私法人、協会、政府機関、あるいはその他の特殊利益集団もしくは機関が設立し維持し運営する図書館。コレクションとサービスの範囲は、上部もしくは親機関の関心のある主題に限定される。
  • 次世代図書館システム
    • 次世代ILSと次世代OPACに分類できる
      • 次世代ILS
        • Integrated Library Systemの進化版?
        • Intelligence Library Systemの進化版?
        • どっちなんだろ
      • 次世代OPAC
        • OPAC(Online Public Access Catalog,オンライン蔵書目録)の進化版?
        • ソーシャルタグ付け・外部API利用・コメントやレビューができる機能を有するあたりから来る
  • 次世代図書館システムの機能
    • 検索
      • 検索側:統合,横断,キーワード入力支援,ファセット,タグ,内容目次
      • 結果側:パーマリンク,ブックマーク,ソート・絞込み,拡張的書誌情報表示,検索結果・書誌エクスポート
    • 利用者参加
      • ソーシャルタギング,コメント,レイティング,レビュー
    • その他
      • 新着資料等RSS配信,資料推薦
    • 会場からのコメント
      • 博物館図書室は書籍とモノをつなぐ重要な部分.外向けよりも内部利用者に目を向けてあるべき姿を考えるべきだ
      • 背景説明に時間がかかり,本質部分の時間が短すぎた.これは研究背景の共有ができていない学会の現状を浮き彫りにするものかもしれない
英国V&A博物館とスコットランド国立博物館所蔵浮世絵のデジタルアーカイブ
  • 立命館大が行った海外博物館のデジタルアーカイブ紹介
    • ヴィクトリア・アルバート博物館:浮世絵,38000枚
    • スコットランド国立博物館:浮世絵,4700枚
  • アーカイブ化をしてわかったこと
    • 泣き別れになっていた続き物の作品が見つかった
    • 同じだと思われていた印刷文字の違いが見つかった
  • 今後
    • 誰がどれを作ったのか,真贋判定も含めて調査研究が必要
所感
  • 博物館とか図書館で,資料を扱うための様々な要件が様々な方面の人たちから発表された,という印象
  • 最後の講評で,学会の会長が言っていたが,「これらの研究発表の上位概念として,メタレベルの「何か」がある」いうことは実感できたかもしれない
  • 以下のような分類.大きく分けると,アーカイブと中の人調査/対応
    • アーカイブ:戦後新聞,文字,版木,浮世絵
    • 中の人調査/対応:東博システム,ファンド,博物館図書室

MLAの連携「デジタルへの実践と課題」

2008年11月18日(火),DAF(Digital Archive Forum)主催で行われたMLAの連携「デジタルへの実践と課題」に参加してきました.今回も会場は慶應大でした.前回のシンポジウムといい,最近慶應に行く機会が多いです.

基本情報
  • 日時:2008年11月18日(火)
  • URL:http://daf.lib.keio.ac.jp/index.php/jpn/News/node_343
  • 参加者:50名×4列=200人くらい収容の部屋で,100人くらいいる?
  • リアルタイムにネットで映像配信をしていたようだ
  • 資料は後でネットにアップされるらしい
プログラム(敬称略)
概要
  • MLA(Museum,Library,Archives)連携のワークショップ
  • 過去2年ワークショップを開催している
  • 2006年:インターネット時代にMLAが連携することに意義があることを確認
  • 2007年:多様な連携の可能性と問題の提起.併せてDAF(Digital Archive Forum)の設立を提案
  • 2008年:紙のデジタル化に焦点を当て,取り組み・現状報告と課題の議論
    • デジタル資料の公開に伴う著作権問題
    • デジタルデータの長期保存
    • デジタルデータの流通,技術,組織,コスト等の諸問題
各発表メモ

デジタル・ネット時代の大学図書館:慶應義塾のデジタル化事業
  • 慶應の杉山先生が講演
  • 図書館の向かうべき姿
    • 特徴的なコレクション(日本固有のもの,アジア固有のもの)のデジタル化と可視化を行う
      • デジタル化:特徴的な資料のデジタル化
      • 可視化:デジタル化したコンテンツを見せるためのソフトウェア?
    • これらを英語で発信することが大事
Digitization among MLA - Emerging examples and challenges
  • OCLCのJames Michalko氏が講演
  • 昨年のシンポジウムで言ったことを振り返る形式
  • 特殊コレクションのデジタル化はやるべき
  • Collective Collectionという概念
    • 皆がWebを使う世界では,ユーザは様々なタイプのコンテンツを求めている
  • コラボレーションの重要性
    • 特殊コレクションもコラボしなければ活きない
    • 技術,標準化,資金調達等も併せて重要
    • 最終形態はConvergence
      • MLA間で知恵を出し合い(Coordination),お金を出し合って共通のデジタルリポジトリを作る(Collaboration)
  • コラボレーションの実践
    • ワークショップでコラボを実践すべし
    • モデルの確立,部門間の連携強化,具体的な方策の議論を行うとよい
    • 実際,OCLC ではデジタル化・横断検索・メタデータ等,5 つのプロジェクトを実践している
    • 興味がある人は資料ダウンロードできるよ(多分下のリンク先)
国会図書館の資料デジタル化:課題と展望
日本におけるデジタル・アーカイブズの紹介:国立公文書館並びにアジア歴史資料センターの取組み
  • 元慶應,現国立公文書館の高山先生が講演
  • 話に落ち着きがあり,慣れてるなって感じた
  • 特殊コレクションとして「公文書」.そうくるよね
  • 公文書のデジタル化はトータルの20%程度か
    • 体制の強化を強調
  • デジタル化の内容
    • 目録情報+オリジナル紙のデジタル化
    • 目録に関しては,年度内に受け入れたものは年度内にデジタル化する
      • 目録デジタル化は 7000件/年
    • オリジナル紙のデジタル化はそのうちに
  • 目録データの検索精度
    • 資料の標準化のレベルが違うので,図書館のほうがレベルが高い
    • 図書館に追いつくのがいいことか,はまた別の問題
  • 外部連携
  • 標準化
    • 地方自治体が準拠可能なデジタルアーカイブシステムの標準仕様書は昨年完成?
      • ネットでは資料見つからず...
  • アジア歴史資料センター
    • シソーラスの整備が課題
      • 太平洋戦争→大東亜戦争,中国侵略→シナ侵略といった表記ゆれの吸収
  • 今後の課題
    • 30年原則に基づき,そろそろ入ってくるパッケージ系,ボーンデジタルの公文書の取扱い
  • Watchすべし
東京国立博物館における資料デジタル化
  • 東博初の情報系研究員,村田氏
  • 東博のデジタル化の現状説明
  • 文化財の写真は事ある毎に撮る
    • 展覧会,図録/目録作成,調査,特別観覧
  • 古典籍はまずマイクロフィルム化
  • 写真フィルムは 4x5 で 30万枚程度
  • 管理システム
  • 課題
    • 学芸員の選別を必要としないユーザニーズの抽出
    • RAWデータの取扱い
    • 研究員の個人撮影写真の利用方法
日本におけるアーカイブズ総合目録の構築
  • 国文学研究資料館EAD/XMLな五島氏.
  • 資料館が戸越銀座から立川に移ったらしい.
  • 全国アーカイブズ総合目録
    • ユニオンカタログという言い方
  • DACSに基づいてシステムを作ったらしい
慶應義塾大学メディアセンターにおけるデジタルへの取組み
  • 違うタイトルで講演.タイトル「紙とデジタル・・・(失念しました)」
  • 入江氏は今回のワークショップの仕掛け人
  • 出版社とユーザがダイレクトにつながることで起こる図書館の中抜き化を防ぐため,データ作成やシステム・保存において図書館の必要性をアピール?
出版コンテンツのデジタル化 現状と可能性
  • 日販の人
  • 電子書籍の現状と課題を語る
  • 内容は主にデジタルコンテンツ白書やケータイ白書等のデータか

ryojin3の考察

今回のシンポジウムは,短時間の割に様々なトピックが織り交ぜられており,非常に濃密であったと同時に,ややまとまりに欠ける感があったかと思います.後でゆっくり考えてみると,資料を扱う仕事をしているあらゆる方面の人達が「資料をデジタル化すること」の意義と問題点について意識を共有する場だったのかもしれません.

デジタル化された後のデータ利用についても考えさせられました.Michalko氏はConvergenceが重要であり,そのためには各機関が持つデータをCollaborationすべきだと言う.これはいろいろ工夫をすれば利用者側から見てインターフェースが統一されるという点で非常に有効です.しか し,そのために各機関がお金を出し合って協業するというのはお金以外に人的にも時間的にもコストがかかり現実味が薄れますし,国や自治体のような機関が中心になるとどうもトップダウンでシステムが組まれ,面白味というか,ワクワク感というか,そんなものがが薄れる気がします.

岐阜県の例にあったような,公開型の大型DBにハイパーリンクを貼ったり,あるいは,複数のDBのAPIを用いてデータを横断的に取得するような仕組み,つまり小さなところ(一般ユーザ?)から大きなところ(専門機関?)に働きかける仕組みのほうがしっくりくる気がするのです.大きなところはそういうことが可能な窓口を用意しておいてくれればよい.

紙をデジタル化する際のポイントの1つに,特徴的なコレクションの作成がありました.この形成方法もまた,小から大へのアプローチが可能なのではないかと思っています.コレクションという語は図書館関係の人がよく使う専門用語かと思いますが,ryojin3は「あるキーワードや定義に基づいて集められるコンテンツ群」と理解しています.専門家が専門知識に基づいてコレクションを作るのももちろん大事ですが,ここでもやはり小から大,一般ユーザのアイデアを専門家の知識が上手にサポートできる仕組みがあった方が面白いかもしれません.

例えばユーザが独自の視点で構築するUser Orientedなコレクションであったり,各コンテンツのメタデータ(+コメント等のアノテーション)を機械的に解析するMachine Orientedなコレクションであったり,CGC(Consumer Generated Content)を実現するシステムというのも面白いのではないでしょうか.ある公文書データと博物館収蔵品データ,歴史的な音声データ等を組み合わせて教材コンテンツを自作するとか,化学データと化学者データを組み合わせて模擬的な実験体感環境を作るとか,そういうことが実現できそうな気がします.

このようなコレクションは,これまでの専門家によるコレクションの形成方法と大きく異なるため,(コンテンツの組み合わせ方にはデザインセンスが必要であるものの)十分魅力的なコレクションになりうると思います.

もちろん,このようなシステムを実現するためには,大側,つまりデータ提供側のデータが整備されていくことが前提になります.

その意味で,データの整備についてもいろいろな苦労が見られて,まだまだ解決課題は多いなと思いました.シソーラス,オントロジ,メタデータあたりのセマンティクス処理が重要なキーになるのではないかと思います.

デジタル知の恒久的な保存と活用にむけて - デジタルジレンマへの挑戦

2008年10月24日(金),慶應大学DMC機構の国際シンポジウム「デジタル知の恒久的な保存と活用にむけて - デジタルジレンマへの挑戦」に参加してきました.このシンポジウムは,映画・図書館・美術館・アーカイブシステム・ストレージデバイスの専門家が講演を行い,「デジタル知」の永続的な保存と活用について議論するシンポジウムでした.

講演内容

上記を見ても分かるとおり,非常に盛りだくさんでした.時間の都合で,最後の鼎談は聞けませんでしたが,1)~6) まで,非常に楽しく拝聴させてもらいました.既に講演資料もアップロードされているようなので,ざっとまとめと所感を書いておきます.

講演 1)
AMPAS(The Academy of Motion Picture Arts and Sciences) がまとめた「The Digital Dilemma」という冊子の内容をまとめたもの.主にデジタル映画素材のアーカイブ化と アクセスに関する課題がまとめられている.ちなみに,会場では冊子の和訳本が配られた.今回が日本発らしい.ラッキー.
講演 2)
国会図書館の長尾先生の講演はいたって普通.国会図書館の紹介から始まり,増え続ける資料とその保存問題,デジタル化と著作権問題,WARP の話等々.
講演 3)
ケン・ディボドー氏は NARA のアーカイブプロジェクトの総責任者らしい.講演資料の最後から2枚目のスライド,Preservation toolsのグラフは興味深い.縦軸に固有性(特定→一般),横軸に技術(技術→方法→オブジェクト)を取り,様々なトピックを配置しているが,1つ1つが掘り下げるとそれだけで本が書けそう.
講演 4)
慶應大の青山先生はデジタルコンテンツの発展を3軸(Volume,Quality,Time)で表現しているのが興味深い.会場からも質問が出たが,Quality をどう評価するのか難しそうだ.また,近い将来ストレージの容量不足が起こることに言及している.いらない情報が多いのか,人間の活動において大量の情報が必要になってきたのか.難しいところ.
パネル 1) (各人の発表)
パネルは,各人がそれぞれデジタル知の永続的な保存と活用について思うところを述べて,それについてディスカッションする形式.
1 人目は Nii の安達先生.Nii がやってる電子ジャーナルの NII-ELS や CiNii を例に,電子図書館と絡めた話をしていた.深層 Web のアーカイブに言及していたのが興味深い.
2 人目は NHK ライツ・アーカイブセンターの長町さん.NHK の映像資料をどう使っていくかの話が中心.活用する素材として,地域映像とか,戦争等の歴史映像,視聴者が撮った映像の二次利用等.映像は権利処理が大変だと認識しているようで,DRM の重要性を話していた.
3人目は慶應大の小野先生.元 NTT で 4K の研究をされていたとか.ユニバーサルアーカイブっていい響きだなぁ.内容はデジタルアーカイブを概観(作成→管理保存→利用)し,アーカイブデータのライフサイクルについてザッと述べていた.デジタル化のところですごいカメラ写真が続出してた.
パネル 1) (討論)
デジタル知の「時間的な持続可能性」について以下の議論が行われた.
  • 電子ジャーナルで昔に撮った解像度の低いデータをどうするか
    • →ある程度技術でカバーできる(!?)
  • 電子ジャーナルの管理用メタデータをどうするか
    • → XML がメインストリーム
  • 映像や音声など,いわゆるマルチメディアをどう取り扱うか
    • → 商業ベースでは既に行われているので,その手法の永続化がテーマ.
    • NHK の場合,映像は国民の財産だから永久保存は大前提.
    • ニュース映像等,鮮度が必要なものはファイルレス・テープレスのハイアクセシビリティが求められる.
  • NHK ではデータだけでは不安なのでフィルムの管理も徹底している.
  • デジタル写真の証拠性は?
    • → 1) GPS と絡めた透かし技術,2) 標準化というアプローチがある.
  • コンテンツの Quality の表現能力は技術的に見てどうか?
    • →時間がかかるが,近い将来(5~10年?)規格に沿った器材が登場し,Quality の表現能力が確保されるだろう
パネル 2) (各人の発表)
パネル 2) も 1) 同様,各人が簡単に発表し,後半議論,する予定だったが,各人が発表をした時点でタイムアウトだった.
1 人目の Pacific Interface の Herr 氏.コンサルだとか.NDIPP,NARAの取り組み,NSF の DataNet の紹介等.
2 人目はビフレステックの井橋氏.元 SONY の人で,光ディスクの標準化が専門.様々な光ディスクの標準について,歴史や規格の意図,最近の動向等を話されていた.今年の夏に NPO 法人アーカイヴディスクテストセンターを作り,ディスクの信頼性評価を行っているようだ.
3 人目は京大の越智先生.非常に面白かった.「密封半導体メモリ」というものを考えており,データが書き込まれた半導体メモリを密封することでそのまま長期保存に活かせないかという話.シリコンと二酸化シリコン(SiO2)で半導体デバイスを構成し,それをガラスで密封してしまうというやり方.メモリチップに物理的な接触がないので,かなり長期間使えるらしい.
4 人目は情報ストレージ研究推進機構の押木氏.ハードディスクの構造と,RAID についてわかりやすく解説をしていた.
その他
  • 鼎談は帰ったので聞けてません...
  • ケン・ディボドー氏(NARAの人)はテレビ講演だった.録画でなく,HDTV をネットワークでつないだものらしい.
  • 机がないので,メモが取りづらかった
  • この日は大雨.靴がぐっちょりしてしまった
  • 休憩時間に水が配られた.リッチ!
  • 専属?のカメラマンがいたのだが,フラッシュをバシャバシャ焚いてて目が痛くなるほどだった.講演の邪魔になるほど写真を撮るのはどうなのかなぁ.
  • 会場写真にチノパンを履いている ryojin3 が足だけ写りこんでいます.到着時間がギリギリだったので,結構後ろの席に座ったんです^^

日本アーカイブズ学会研究会

10/4(土),学習院大学で開かれた日本アーカイブズ学会の2008年度第1回研究会「デジタル情報技術が拓くアーカイブズの可能性」に参加してきました.

プログラム

  • アジア歴史資料センターから見たデジタル・アーカイブズの現在と展望(国立公文書館アジア歴史資料センター調査員,平野宗明(代表),相原佳之,石田徹,蔵原大,黒木信頼,中村元,牧野元紀)
  • 「デジタルアーカイブ」と記録資料 - "正倉院文書データベース"と近代史料のデジタル化を通して - (花園大学文学部文化遺産学科専任講師,後藤真)
上記2件の発表の後,以下の方々と会場を交えたパネルセッションがありました.
本当に気持ちよく晴れている週末の昼下がり,人文系の人たち(特に歴史系の人が多かったのかな)が考えるデジタルアーカイブの議論は非常に白熱して心地よいものでした.

※レポはryojin3の所感であり,講演者の意見・意図が100%反映されているとは限りません!その点ご注意くださいませ.なお,登場する人たちは全て敬称を略させていただいております.



1件目の発表はアジア歴史資料センターデータベース構築作業の話が中心でした.アジ歴(と略すらしい.Webサイトを見てみたら,ヘッダに括弧付きでアジ歴って書いてあった)のDBのデータ構成,アクセス機能,問題点等のお話を聞くことができました.

アジ歴DBのデータ構成

ちなみに,アジ歴の場合,国立公文書館外交史料館防衛省防衛研究所図書館,の各機関がそれぞれマイクロフィルムをデジタル化し,アジ歴がDBにまとめている.マイクロフィルムは文字記載面をモノクロ撮影.細かい解像度やサイズ等の話は聞けず.

画像データ
  • DjVuフォーマット.なんで感たっぷり.
目録データ
  • データ作成フロー
  1. 各機関がメタデータを提供
  2. 外部業者がデータ作成
  3. アジ歴スタッフが内容チェック,DB登録.
メタデータ
  • データフォーマットはEAD.
  • 出力時にはDCの12項目を利用.
メタデータ構成
  • レファレンスコード:資料識別番号.館識別子を頭に付けた12桁.
  • 資料整理コード:資料の配置・配列を表す.館名や件名等を4x10の数値データで表す.
  • 簿冊キー:各館の文書整理番号.館間で違わないのかは不明.
  • オリジナル資料の所在:CDのボリューム名とかって説明があったが,それでわかるのかな...
  • 複製の存在:各館のマイクロフィルムのリール番号.
  • 内容情報:件名表題,作成者名称,作成年月日,記述単位の年代域,言語,規模,組織歴/履歴,範囲と内容/要約

アジ歴DBのアクセス機能

体系化
  • 資料構造を再現するために,リンクで階層構造を実現している.
  • 資料配列を再現するために,資料整理コードを用いている.
シソーラス?
  • アジア歴史資料辞書
  • 検索キーと実データの表記揺れや関連を意味的に結びつける辞書.
検索
  • 50音,階層,キーワード(詳細も),レファレンスコードで検索できる.

アジ歴DBの問題点

スタンス
  • あるものは全部出す.つまり,センターの性格上,公開データの選り好みをせずに,存在する資料は全部公開する方向.
検索精度
  • これは難しい.再現率と適合率の話.
シソーラスの精度
  • 意味的な結び付け方について,検討中.これも相当難しそう.
データの正確さ
  • そもそも原本が間違っている場合がある.誤記の取扱いも検討中.
不足しているもの
  • 人と予算.
  • ユーザ活用の方向も検討中.
情報の保存
  • 基本的にデジタル情報の保存は期限付きと捉えている.
  • エミュレーションやマイグレーションは課題.
  • ここでもやっぱり,人と予算...
まとめ
  • デジタルアーカイブは今後大きな位置を占めるに違いない.
  • 様々な機関DBの統合的利用ができるとうれしい.


2件目の発表は,いくつかのデジタルアーカイブ構築を具体的に行った経験を基に,実際の現状と問題点を整理してみた,という話でした.人文系の方々のこだわりポイントがよくわかり,個人的には非常に興味深く聞くことができました.

正倉院文書データベース SOMODA
  • 正倉院が管理する文書の閲覧システム.
  • 2004~2006年度の科研費/研究成果公開促進費(データベース)
  • 文書の形態は巻物.裏に書かれている戸籍や計帳(税金基礎台帳)も重要.
  • 裏に書かれていたものの都合上,バラバラに管理されていた.
  • 断簡という単位で保存されているので,その単位のままデジタル化.
  • トータル50600画像,20800ページ,35300件.
  • 各種検索機能あり
  • テキストと画像を相互に参照できる仕組み.
  • 画像の勝手利用を防ぐため,40x40ピクセルに分割して表示.

上田貞治郎写真コレクション(大阪市立大学)
  • 上田貞治郎が集めた古写真アルバムのDB化
  • 単位の粒度は「コレクション→アルバム→ページ→写真」と階層化.
  • アルバム単位とは複数の写真が含まれた状態.
  • カラー
2つの取り組みを通して
  • 基本的に史料の構造はそのままで表現する.
  • 史料のデータ構造はバラバラの場合もあるので,その場合は構造化する.
  • デジタルは保存に向かない.
  • ソフト:真正性の確保が困難,デジタルデータは可変性に富みすぎている,等
  • ハード:サーバ維持等のコストがかかる,今まで方式と比べて負荷がかかる,等
デジタルアーカイブのマイナス面
  • これまでのものは優品主義・美術優位・視覚優位の姿勢.
  • 「アーカイブズ」ではない.
デジタルアーカイブのプラス面
  • 文化遺産の振興に貢献.
  • 間接的保存に有効.
  • アーカイブの理解には役立つ.
まとめ
  • デジタル化で保存問題は解決しない.
  • 活用によって保存が進む.


パネルセッション
以下,コメンテータと発表者のコメントを交えて議論が交わされました.

岡本氏のコメント
岡本氏のブログに詳細が載っています.ryojin3はメモ抜粋のみです.

考慮すべきはデータの保存,再構成,提供.

保存
  • 100年単位の保存は難しい.
再構成
  • データは減衰する.
  • データの正確性(=信頼性)と真正性(=信憑性)として考えてみたらどうか.
  • 原本の間違いとデジタルであることによる可変等.
提供
  • デジタルにすることでもたらされることを考えるべき.
  • 情報の活用が進む.
近藤氏のコメント
  • データの戦略的活用ができているか.
  • 保存は原本へのアクセスを低減する.
  • ボーンデジタルの問題.
後藤氏のコメント
  • 岡本氏の「データは減衰する」に賛成.
  • 間違いの多い資料は校正(改訂履歴)も含めてデジタル化すべき.
平野氏のコメント
  • とにかくあるものをデジタル化して提供することが使命と捉えている.
会場から
 Q 使い方はユーザが決めるもので,評価は難しいと思うがどうか.
 A そうはいっても戦略は必要.
 A 提供側は,資料を整理して提示することで評価されやすくなる.
 A 使い方に様々な選択肢があるのはいい.
 A 資料リコメンドのような仕組みはありかも.

 Q 教育利用を考える場合,豊富なメタデータは重要.情報の価値や幅をどう捉えているか.
 A 幅が出るよう,様々な利用形態を考えてみたい.

 Q アーキビストにとって情報技術は何をもたらすのか.
 A 様々な情報技術を用いて,豊富なメタデータを付けやすくなるのではないか.
 A 中の人だけじゃなくて,外の人にも使えるようにするためのツール.
 A 組織間のコミュニケーションツール.

ryojin3の考察

最後の会場とのやりとりがすごく面白かったのですが,聞き入ってしまい,かなりメモを取り損ねました.メモ術は難しいのう.

さて,以下,ryojin3の考察です.

まず,どの発表・コメントにおいてもデジタル保存は難しいという認識が共有されていることが面白い.現状,保存に関してはソフトウェア的な手当てとしてエミュレーションとマイグレーションが主流です.前者はデータ再生環境をソフトウェアで実現する手段,後者はデータや再生ソフトウェアをまるごと新しい環境に移植する手段です.また,ハードウェア的な手当てとして長期間利用可能な持続性を持つストレージの研究開発がなされています.更に,保存用メタデータスキーマやISOの標準等も様々な角度から検討されている状況にあると認識しています.

しかし,これらは現場のアーカイブ作業をする人々からすれば,まだまだ枯れた技術には程遠い,実験的な研究領域を出ていないということなのでしょう.

デジタルを用いないアーカイブの実験として,先日ロゼッタ・プロジェクトのニュースを耳にしました.これは,チタン/ニッケル製の球状の物体に1500もの言語を超微細エッチング加工を施し,情報を後世に残すプロジェクトだそうです.

永久に,という意味ではこれでも不十分なのかもしれませんが(何を永久にするかという定義にもよります),紙やマイクロフィルムよりも長く持つことは明らかです.しかし,このようなやり方は当然膨大な各種資料(紙だけではありません.絵画や博物館の収蔵品,計測も難しい大型遺跡や動く!無形文化財までも)には適用できない部分が多くあります.

その点,あらゆる形式のモノを一元的にデジタル化し,ソフト・ハード両面から,またスキーマのようなデータ構造から長期保存を支えるというアプローチは個人的にありだと考えています.

もちろん,登壇した方々も同じ認識だと思います.ただ,それだけじゃダメだということ.現状ではデジタルと物理的なモノの両方から,複合的に長期保存を行うスキームを構築することが重要なのでしょう.

次に,データの活用についてです.活用は本当に様々なやり方があります.現状だと,Webを使ってインターネット公開をする手法が主流だと言えます.むしろ,それと同義でデジタルアーカイブが語られている場合すらある.

このような現状で,岡本氏の発言は非常に的を得ていたと思います.つまり,データの活用は提供側がコントロールしなくても良い,ということです.近年のインターネット関連企業はまずサービスをリリースし,すぐそのAPIを公開します.これは,サービスの使い方を提供側で規定するのではなく,データ込みで利用者側に工夫してもらおうとする試みです.

自分達が企画した範囲内での利用と,世界中のアイデアを用いた利用とではどちらが有益な使われ方をするか,どちらが多く使われるか,一目瞭然だと思われます.その意味で,ryojin3は岡本氏の考えに賛同できると言えます.

今回の研究会は人文歴史系の方々が多く参加されていたようなので,だいぶアウェイ感がありましたが,非常に面白い研究会でした.