2008年10月24日(金),慶應大学DMC機構の国際シンポジウム「デジタル知の恒久的な保存と活用にむけて - デジタルジレンマへの挑戦」に参加してきました.このシンポジウムは,映画・図書館・美術館・アーカイブシステム・ストレージデバイスの専門家が講演を行い,「デジタル知」の永続的な保存と活用について議論するシンポジウムでした.
講演内容
上記を見ても分かるとおり,非常に盛りだくさんでした.時間の都合で,最後の鼎談は聞けませんでしたが,1)~6) まで,非常に楽しく拝聴させてもらいました.既に講演資料もアップロードされているようなので,ざっとまとめと所感を書いておきます.
講演 1)
講演内容
- 講演 1)
- Digital Dilemma(pdf)
- Andy Maltz
- Director of the Science and Technology Council, The Academy of Motion Picture Arts and Sciences
- 講演 2)
- 国立国会図書館における資料保存の現状とディジタルアーカイブへの努力(pdf)
- 長尾真
- 国立国会図書館長
- 講演 3)
- アーカイブ情報システム-米国公文書館のアプローチ(pdf)
- Kenneth Thibodeau
- Director of Electronic Records Archives Program, National Archives and Records Administration
- 講演 4)
- デジタルインフォテーク研究の課題と展望(pdf)
- 青山友紀
- 慶應義塾大学DMC機構教授
- パネル 1) デジタル知の集積とその流通の課題と展望
- 安達淳 国立情報学研究所教授 講演資料(pdf)
- 長町亨 NHKライツ・アーカイブスセンター担当部長 講演資料(pdf)
- 小野定康 慶應義塾大学DMC機構教授 講演資料(pdf)
- 青山友紀 慶應義塾大学DMC機構教授(進行)
- パネル 2) 持続するデジタルアーカイブシステムの課題と展望
- Solving the Challenges of Digital Archiving
- Laurin Herr(コンサルタント)
- アーカイバル情報保存から見た光ディスクの展望
- 井橋孝夫(ビフレステック株式会社 代表取締役社長)
- ガラスディスク技術の可能性
- 越智裕之(京都大学准教授)
- 磁気ディスク装置による情報ストレージ
- 押木満雅(情報ストレージ研究推進機構専務理事)
- 鼎談 デジタル知と21世紀社会システムの展望
- 長尾真 国立国会図書館長
- 青柳正規 国立西洋美術館長
- 所眞理雄 ソニーコンピュータサイエンス研究所 代表取締役社長
- 中村伊知哉 慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授(進行)
上記を見ても分かるとおり,非常に盛りだくさんでした.時間の都合で,最後の鼎談は聞けませんでしたが,1)~6) まで,非常に楽しく拝聴させてもらいました.既に講演資料もアップロードされているようなので,ざっとまとめと所感を書いておきます.
講演 1)
AMPAS(The Academy of Motion Picture Arts and Sciences) がまとめた「The Digital Dilemma」という冊子の内容をまとめたもの.主にデジタル映画素材のアーカイブ化と アクセスに関する課題がまとめられている.ちなみに,会場では冊子の和訳本が配られた.今回が日本発らしい.ラッキー.講演 2)
国会図書館の長尾先生の講演はいたって普通.国会図書館の紹介から始まり,増え続ける資料とその保存問題,デジタル化と著作権問題,WARP の話等々.講演 3)
ケン・ディボドー氏は NARA のアーカイブプロジェクトの総責任者らしい.講演資料の最後から2枚目のスライド,Preservation toolsのグラフは興味深い.縦軸に固有性(特定→一般),横軸に技術(技術→方法→オブジェクト)を取り,様々なトピックを配置しているが,1つ1つが掘り下げるとそれだけで本が書けそう.講演 4)
慶應大の青山先生はデジタルコンテンツの発展を3軸(Volume,Quality,Time)で表現しているのが興味深い.会場からも質問が出たが,Quality をどう評価するのか難しそうだ.また,近い将来ストレージの容量不足が起こることに言及している.いらない情報が多いのか,人間の活動において大量の情報が必要になってきたのか.難しいところ.パネル 1) (各人の発表)
パネルは,各人がそれぞれデジタル知の永続的な保存と活用について思うところを述べて,それについてディスカッションする形式.
1 人目は Nii の安達先生.Nii がやってる電子ジャーナルの NII-ELS や CiNii を例に,電子図書館と絡めた話をしていた.深層 Web のアーカイブに言及していたのが興味深い.
2 人目は NHK ライツ・アーカイブセンターの長町さん.NHK の映像資料をどう使っていくかの話が中心.活用する素材として,地域映像とか,戦争等の歴史映像,視聴者が撮った映像の二次利用等.映像は権利処理が大変だと認識しているようで,DRM の重要性を話していた.
3人目は慶應大の小野先生.元 NTT で 4K の研究をされていたとか.ユニバーサルアーカイブっていい響きだなぁ.内容はデジタルアーカイブを概観(作成→管理保存→利用)し,アーカイブデータのライフサイクルについてザッと述べていた.デジタル化のところですごいカメラ写真が続出してた.パネル 1) (討論)
デジタル知の「時間的な持続可能性」について以下の議論が行われた.
- 電子ジャーナルで昔に撮った解像度の低いデータをどうするか
- →ある程度技術でカバーできる(!?)
- 電子ジャーナルの管理用メタデータをどうするか
- → XML がメインストリーム
- 映像や音声など,いわゆるマルチメディアをどう取り扱うか
- → 商業ベースでは既に行われているので,その手法の永続化がテーマ.
- NHK の場合,映像は国民の財産だから永久保存は大前提.
- ニュース映像等,鮮度が必要なものはファイルレス・テープレスのハイアクセシビリティが求められる.
- NHK ではデータだけでは不安なのでフィルムの管理も徹底している.
- デジタル写真の証拠性は?
- → 1) GPS と絡めた透かし技術,2) 標準化というアプローチがある.
- コンテンツの Quality の表現能力は技術的に見てどうか?
- →時間がかかるが,近い将来(5~10年?)規格に沿った器材が登場し,Quality の表現能力が確保されるだろう
パネル 2) も 1) 同様,各人が簡単に発表し,後半議論,する予定だったが,各人が発表をした時点でタイムアウトだった.
1 人目の Pacific Interface の Herr 氏.コンサルだとか.NDIPP,NARAの取り組み,NSF の DataNet の紹介等.
2 人目はビフレステックの井橋氏.元 SONY の人で,光ディスクの標準化が専門.様々な光ディスクの標準について,歴史や規格の意図,最近の動向等を話されていた.今年の夏に NPO 法人アーカイヴディスクテストセンターを作り,ディスクの信頼性評価を行っているようだ.
3 人目は京大の越智先生.非常に面白かった.「密封半導体メモリ」というものを考えており,データが書き込まれた半導体メモリを密封することでそのまま長期保存に活かせないかという話.シリコンと二酸化シリコン(SiO2)で半導体デバイスを構成し,それをガラスで密封してしまうというやり方.メモリチップに物理的な接触がないので,かなり長期間使えるらしい.
4 人目は情報ストレージ研究推進機構の押木氏.ハードディスクの構造と,RAID についてわかりやすく解説をしていた.その他
- 鼎談は帰ったので聞けてません...
- ケン・ディボドー氏(NARAの人)はテレビ講演だった.録画でなく,HDTV をネットワークでつないだものらしい.
- 机がないので,メモが取りづらかった
- この日は大雨.靴がぐっちょりしてしまった
- 休憩時間に水が配られた.リッチ!
- 専属?のカメラマンがいたのだが,フラッシュをバシャバシャ焚いてて目が痛くなるほどだった.講演の邪魔になるほど写真を撮るのはどうなのかなぁ.
- 会場写真にチノパンを履いている ryojin3 が足だけ写りこんでいます.到着時間がギリギリだったので,結構後ろの席に座ったんです^^
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