様々な博物館情報

Webにはたくさんの博物館に関するページがあります.

どんなものがあるかを分類してみたいと思いますが,その前に今一度,博物館について定義してみると,博物館とは以下のものを指します.
特に,Wikipediaでは以下のように定義されています.

英語のミュージアムは古代エジプト、プトレマイオス朝の首都アレクサンドリアにあった総合学術機関であるムーセイオンに由来する。ムーセイオンは、ギリシア語で「ムーサ(ミューズ:芸術や学問をつかさどる9人の女神たち)の殿堂」を意味する。この名のとおり欧州語の museum は、日本語でいう美術館(アート・ミュージアム)も内包する概念であり、同様に日本語で博物館という名称を付さない資料館、文学館、歴史館、科学館などの施設も、世界標準では博物館の概念に含まれる、専門博物館の類型である。水族館、動物園、植物園といった生きている生物を収集する施設の場合は、植物園の標本館であるハーバリウム施設を除くと博物館とは分けて考えられる傾向にあるが、同一の発想に基づく類似施設である。なお、これらは博物館法上は「生態園」と呼称されている。
つまり,単に博物館と言っても,美術館,資料館,文学館,歴史館,科学館,類似施設まで含めると,水族館,動物園,植物園までもその概念に含まれ,非常にバリエーションに富んだものになります.

このように多岐に渡る博物館ですが,Webで公開されている情報は,大雑把に分けて以下のように分類できると思います.
  1. 個々の博物館サイト
  2. 博物館のポータルサイト
  3. 博物館に関する行政機関・関連団体のサイト
  4. 博物館に関する調査研究機関・関連団体のサイト
  5. 個人の来訪記録・感想・メモサイト
1)はそのものズバリ,各博物館が自館のイベント情報や収蔵品情報,各種案内を公開するためのサイトです.2)は数多く存在する1)に関する取りまとめリンク集や検索,イベント情報等を提供するメタサイトになります.3)と4)は博物館に関する行政情報や調査研究の成果等が公開されています.また,5)はblogや個人サイトの形で博物館に関する様々なクチコミ評価がされているサイトだと言えます.

もちろん,この分類は完全なものではありませんし,機能や情報が複合的に組み合わせられたサイトも多数存在します.

ということで,ryojin3の独断と偏見で,実際のサイトをいくつかご紹介します.こちらも網羅的なものではありません(だから,リンクが載ってない!等の苦情はご勘弁を!).※以下のリンクは後にタイトルバー下の「link」に整理して公開する予定です.

1) 個々の博物館サイト
  • 多すぎなので,2)に譲る
2) 博物館のポータルサイト
3) 博物館に関する行政機関・関連団体のサイト
4) 博物館に関する調査研究機関・関連団体のサイト
5) 個人の来訪記録・感想・メモサイト
  • 現在整理中〜

ICOM/CIDOCの取り組み(1)

博物館メタデータの標準化は日本を含めた世界各国で進められています.

前回述べたように,「モノを管理するためのデータ資源=メタデータ」を標準化することは博物館業務従事者の作業コストを削減するのみならず,データ資源の品質向上につながります.

特に,近年ではIT化やグローバル化(これらの言葉はやや形骸化している気もしますが)に伴い,世界が狭くなっています.各国間でモノの貸し借りをする際やWeb上でデータのやりとりをする際には,国を超えて標準的な形式で行ったほうが効率的ですし,品質も維持向上しやすいと考えられます.

国際博物館会議(ICOM:The International Council Of Museums)の国際ドキュメンテーション委員会(CIDOC:International Committee for Documentation)は1950年に設立した歴史ある団体で,古くから博物館メタデータの標準について認知,議論をしていました.

以下,CIDOCにおける標準化活動について,時系列に示します.

  • 1978年 博物館における資料同定のための最小限情報
  • 1994年 博物館資料の最小限情報分類勧告
  • 1995年 博物館資料情報のための国際標準CIDOC情報カテゴリ
  • 1998年 CIDOC/CRMの提案

まず,1978年に「博物館における資料同定のための最小限情報」として16項目が提案され,考古学・民俗学分野においてデータセットの有用性が検証されています.

CIDOCはこの考え方を発展させ,1994年には「博物館資料の最小限情報分類勧告」(MICMO:Proposed Guideline for an International Standards: Minimum Information Categories for Museum Objects)を,翌1995年にはMICMOをベースとした「博物館資料情報のための国際標準CIDOC情報カテゴリ」(IGMOI:International Guideline for Museum Object Information: the CIDOC Information Categories)を提案しています.

IGMOIは,以下のサイトで読むことができます.

本家(pdfファイル)
http://cidoc.mediahost.org/guidelines1995.pdf
日本語訳(村田良二氏)
http://ryoji.sakura.ne.jp/museuminfo/guide/guide.htm

参考文献

  • 水嶋英治. "博物館情報学の現状と課題". 博物館情報学入門. E.Orna & Ch.Pettitt編. 勉誠出版, 2003, p.180.
  • 水嶋英治. "博物館・美術館における所蔵資料記述とメタデータ". 図書館目録とメタデータ. 日本図書館情報学研究委員会編. 勉誠出版, 2004, p.170-p.172.
  • 秋元良仁. 文化財メタデータの構築. 映像情報メディア学会誌. Vol.61, No.11, 2007, pp.1578-1581.

博物館におけるメタデータ

前回の続きです.

前回,博物館情報学とは「モノを管理するためのデータ資源=メタデータ」に着目し,博物館を楽しむための学問だと書きました.では,博物館におけるメタデータとは,どのようなものがあるのでしょうか.また,それを使うとどう楽しめるのでしょうか.

今回は前者の「博物館におけるメタデータ」について書きたいと思います.

単に「モノを管理するためのデータ資源」といっても,モノそのものの管理情報(物理的な特性等)もあれば,モノに関する来歴情報(今まで管理されてきた遍歴や所在,メンテナンス情報等),権利情報や関連資料情報,モノの管理に携わる人的リソース情報等,様々な情報が考えられます.

日本も含めた世界各国において,これらの情報を整理して標準化する動きがあります.

標準化とは,堅い言葉で言うならば,「実在の問題又は起こる可能性がある問題に関して,与えられた状況において最適な秩序を得ることを目的として,共通に,かつ,繰り返して使用するための記述事項を確立する活動」(JISZ8002)のことを言います.

要するに,誰がいつ実施しても同一にでき,かつ合理的に進めることのできる仕事の方法のことを標準と言います.一般的に標準化を行うことで,業務効率化によるコスト削減,品質の維持向上等が行えると言われています.

これを博物館におけるメタデータの標準化に当てはめてみますと,博物館業務の効率化に伴い業務従事者の作業コストが削減し,かつモノを管理するためのデータ資源の品質が維持向上していく,と考えられます.

では,具体的に各国でどんな取り組みがなされているのか・・・

は,また今度^^

博物館情報学とは

あー,いきなり難しいタイトル付けちゃいました.

Google先生に「博物館情報学」と問い合わせてみると,一発目にこの本がヒットします.

博物館情報学入門
http://www.amazon.co.jp/dp/4585001727

章立てを見てみると,以下のようになっています.

第 1章 博物館情報学 序論
第 2章 博物館情報とは何か?
第 3章 博物館情報の利用者
第 4章 博物館情報のアクセス管理
第 5章 博物館の情報戦略
第 6章 情報管理における人的資源
第 7章 人的資源を支援する今日的技術の利用
第 8章 情報管理システムの調達と設置
第 9章 情報管理システムの編成と稼動
第10章 博物館ドキュメンテーション協会(MDA)
解説  博物館情報学の現状と課題

まぁ,定義・利用者・戦略・システムと様々な切り口から語られていますが,これらに共通していえることは,最後の解説記事を読むとよくわかります.

博物館情報学とは,要するに博物館でこれまで主役だった「モノ」ではなく,「モノを管理するためのデータ資源」に着目した学問だと言うことができます.俗に言うメタデータってやつ.メタデータを活用することによって,博物館を楽しむ試みが博物館情報学の本質なのです(いや,言い切るのは怖いな.「だと思います」くらいでお願い致します^^)

このblogについて

このblogでは,博物館情報学という稀有なジャンルのトピックや考察についてアレコレ書いていこうと思っています.

現在,とある会社の研究所に勤務する傍ら,大学の博士課程で学位取得に向けて邁進しているところです.専門は情報学(特にXML関係)なので,博物館系のハナシはだいぶ素人じみていると思いますがお付き合い頂ければ幸いです.

博物館情報学研究会

研究会に参加してきましたー.

 システムの紹介というか,事例の紹介というか.そういった内容が多く,もう少し深いところで議論がしたかった.つまり,知識の交換をしたり,属人化を防ぐためにシステムはどうサポートしていくべきなのかといった辺り.



東京国立博物館「博物館情報学研究会」のご案内
http://webarchives.tnm.jp/archives/info/2
日時
 2007年8月29日(水) 13:30~16:30 (会場受付は13:00から)
会場
 東京国立博物館 平成館小講堂
報告者
 *横溝廣子 氏(東京藝術大学大学美術館准教授)
 *井上卓朗 氏(日本郵政公社郵政資料館資料専門員)
 *村田良二(東京国立博物館情報課研究員)
各機関の所蔵品データベースの構築と利用に関する報告と、全体的な意見交換を行います。




以下,所感.

 知識交換や知識の属人化を防ぐ一つの解として,業務と連動して博物館情報を蓄積できる仕組みを作ることはアリだと思う.

 ここで言う博物館情報とは2つの側面を持つ.1つは収蔵品そのものを対象とした歴史研究要素の強い情報(研究メタデータ),もう1つは展示会による収蔵品の貸し借りや,寄贈・寄託を含む受入,盗難や組織改変に伴う移動等,業務に根ざした動的な情報(業務メタデータ).

 前者は作るのに時間も手間もかかる.それに対して後者は比較的簡単に作れて,しかもすぐに,いろんな場所で使われることが見込まれる情報だ.

 システムはまず後者をサポートし,基礎的な業務知識の交換が可能な状態を作る必要がある.これがたまってくると知識の属人化を防ぐことができるし,業務も効率的になっていくはずだ.そうなると,今度は研究メタデータを作る時間ができる.研究メタデータが増えてくると,今度は業務における重要な意思決定の基礎データとしても活用できるようになる(本当に受け入れてもいいモノか,本当に破棄してもいいモノか,等々).

 この状態を実現するには,所謂モノのID付けが非常に大事になってくる.モノは必ずしも1つではないので(グループで1つだったり,もとは1つだったものが分かれたり,パターンはいろいろ),IDを簡潔にかつ階層的に付与する方法が重要になってくるだろう.この基本的な考え方は情報のライフサイクルやコンテンツ管理に近いところがあるかもしれない.

 日本の場合,学芸員の分業がまったくなされていないので,学芸員にかかる負担は相当なものだ.結果,データの整備が遅々として進まないという事態を招く.業務支援をしつつデータも整備できる仕組みの確立は急務だろう.