ディジタルアーカイブの長期利用に関するシンポジウム

3/14(金),筑波大学まで行って来ました.IPSJの全国大会が開催されており,活気を帯びていましたが,学び舎は古くなり,やや疲れた感じがしました.

お目当ては以下のシンポジウム.

ディジタルアーカイブの長期利用に関するシンポジウム

プログラム

13:00 - 15:00 講演
  • Short Introduction, Heike Neuroth (Goettingen State and University Library, Max Planck Digital Library Berlin)
  • Organizational Issues: Trusted Repositories/Archives, Policy. Stefan Strathmann (Goettingen State and University Library)
  • Technical Issues: kopal, repository systems, ingest, validation. Heike Neuroth
15:30-17:00 ディスカッション(ラウンドテーブル)
  • ゲッチンゲン大学+国立国会図書館+国立公文書館+筑波大
後半のディスカッションが見所かと思いますが,ディスカッション前の休憩時間に恩師を訪ねたのが運の尽き.久しぶりの再開に話が弾んでしまい,後半まるごとブッチしてしまいました.何しに筑波まで行ったんだか...ま,恩師の元気な姿が見れたから良しとするか.

なので,今回の投稿は前半部のみです.

Short Introduction, Heike Neuroth (Goettingen State and University Library, Max Planck Digital Library Berlin)

Organizational Issues: Trusted Repositories/Archives, Policy. Stefan Strathmann (Goettingen State and University Library)

Technical Issues: kopal, repository systems, ingest, validation. Heike Neuroth
  • 当面の課題
    • ディジタル情報は元来複雑
    • 個人の要求は全く異種
    • 一般的な品質の評価基準は抽象的
    • フレームワークは実装レベルと程遠い
    • リポジトリソフトは複雑
    • システムの品質は個々の設定に大きく依存する
    • 製品のドキュメントは依然問題
  • Decision Process
    1. 参照モデル,技術,ユースケースから評価基準カタログ(Criteria Catalog)を作る.
    2. 市場のアーカイブ製品を調べる.
    3. 1,2をRatingし,製品比較を行い,ランク付けをする.
    4. 3と併せて個々の要求分析等を行い,
    5. 製品を選定する
  • 評価カタログの詳細(やや手抜き)
    • カタログ構造
    • 一般的な属性
    • 機能的な属性(取り込み,アクセス,ストレージ,アドミン)
    • 非機能的な属性(コスト,品質)
  • 具体例

前半戦 質疑
[Q]アーカイブへの多様なアクセスはどう考えている?
[A]アーカイブ用とアクセス用は分けて考えたほうが良い.

[Q]州と大学の図書館ということだが,州図書館としての役割は?(リポジトリシステムの中には高いものもある.)
[A]システム導入時のコンサルティング代行,システムレンタル等の運用を通して市町村等予算の少ない図書館のサポートができたら良いと考えている.

[Q]TRAC,DRAMBORA,nestorの違いを教えて欲しい.
[A]nestorとTRACは自己評価用.DRAMBORAはリスク評価用.

[C]ディジタルアーカイブは,評価・選別・廃棄のサイクルが大事.永久に残すものとそうでないものに分ける必要性を感じた.

[Q]アクセスフォーマットはネットワークのものとアーカイブのものは異なるのか?
[A]異なる.例えば,原本はtiffで,公開はjpgで,のように.

[Q]原本をサポートするツール(読みづらい昔の文字を現代の文字に変換するスクリプトのようなもの等)を用いる場合があるが,これもアーカイブの対象か?
[A]対象だ.ただし,原本とツールは異なることを理解する必要がある.


後半のディスカッションの前に,国立国会図書館のディジタルアーカイブの話と国立公文書館のディジタルアーカイブの話があったかと思われます(資料は手元にある).しかし,先の説明の通り,講演を聞いていないので,今回は割愛させて頂きます.

ETV特集「フィールドへ異文化の知をひらく」を見る

先ほど,国立民族学博物館文化人類学に関するテレビ番組を見ました.


直接的に博物館情報学とはリンクしないかもしれませんが,異文化/多文化を理解し,共生するための手法である「文化人類学」は,様々な異種データ群をメタデータを介して交換・統合していく世界と似たものを感じ,またそういう世界は博物館情報学の一側面であると感じたので,エントリしてみます.

残念ながら,途中(22:30くらい)からの視聴なので,前半部はどういう放送だったのかわかりません(^^; 以下,後半部のまとめです.

■研究する側される側の関係
  • 例1:アイヌの踊り(=文化)を博物館を介して発信する.
  • 例2:ペルーの博物館は日本人が建てて,運営は地元の人.
  • 遺物(の意味)とは,語り/昔の言い伝え/地元の人々の記憶等との併せて考えるもの.また,その活用も大事.
  • 風土を作るには,土の人(→地元民)と風の人(→旅人)がお互いにいい影響をしあうことが大事.
  • 他者との関係・認識のあり方は,対話・時間と空間の共有を通して少しずつ変わっていくしかない.
■異文化理解・多文化共生を深めるには
  • 松園さん
    • 文化人類学者は土地に入り,土地の人達とともに生活をする.最初は土地のことがよくわからないが,だんだん分かってくる.謎解きの面白さのように,忍耐強く,人に寛容である必要がある.
  • 鷲田さん
    • 異文化理解や多文化共生には,他者と考えや気持ちが同じになるということではない.むしろ,交われば交わるほど,お互いの差異が際立ってくる.そしてその事実を受け入れることが大事.フィールドワークを通して,他者の世界観を身体的な感覚で汲み取ろうとするのは重要なこと.
  • 関野さん
    • 文化相対主義とは,上下関係ではなく,文化を相対的に見るもの.
  • 松園さん
    • 多文化共生への努力は,様々な味付けの料理を食べられるということ.

■広がる研究フィールド
  • 例1:タイ・ランプーンにおける日本文化とタイ文化の比較,平井京之助さん
    • 1980年末に日本企業のエレクトロニクス関係の工場ができたことによる,周辺地域への影響について調査.
    • 異文化が地域に与える影響(いい面も悪い面も含めて)を調べることで,双方が良くなる手助けをする.
    • グローバル化→文化人類学のフィールドの広がり→調査対象と研究対象/内容が広がる.
  • 例2:パプアニューギニアの津波(1998)と新潟県中越沖地震(2004)を通した,災害の復興調査,林勲男さん
    • パプアニューギニア津波では,支援がNGOの名声のために利用されたり,パプアニューギニア文化を無視した支援が一部であった.
    • 新潟では,被災者個々人の思いを聞いて回り,体験記録集の作成した.このような記録は震災の教訓・知恵を次の世代に伝える手助けとなる.
    • ネットワーク作りの大切さ:地元外NGO+地元=復興の企画等(震央米).
    • 林氏の目指すところ
      • 防災を含めた人々の安全な暮らしの確保を考える.
      • 行政,ボランティア,研究等様々な立場の人が知恵を出し合って取り組む分野.
      • 文化人類学的には,災害現場の状況理解をまとめ,次世代に伝えることが大事.
  • 例3:医療分野や開発協力への適応,白川千尋さん
    • マラリアの感染には有効予防接種がないので,蚊帳が有効だが,現地では多くの人が蚊帳を使ってくれなかった.
    • 蚊帳を配るだけでなく,それを使ってもらえるような方策を考えることが大事.
    • 現地には多様なニーズがある.それにあったきめ細かいサポートを提供するため,対象者のありようをきめ細かく見ておく必要がある.ここで文化人類学的な視点が重要で,「開発人類学」が形成されつつある.
    • 開発を成功させるためのブローカーになるのではなく,以下が大事.
      1. 地域の社会情報・文化情報を提供し,
      2. 常識を別の角度から見直して相対化する.
■文化人類学の課題
  • 鷲田さん
    • 今の文化人類学
      • グローバル化→複雑なファクター/コンテキストが絡み合っている.
      • コンテキストの多層性・多次元性→文化を多元的に調べる.
    • この状況で,文化人類学は野生的でなくなってきた.
  • 松園さん
    • 文化人類学は長い歴史の中で全体として人間を見る.現代は対象の外から様々な要素が入り込み,対象が複雑になっている.その状態で文化人類学者は刻々と移り変わる対象に目を奪われ,長いスパンで考えられにくくなってきている.これは問題だ.
  • 鷲田さん
    • そうは言っても,複雑性への感覚はスゴイ.繊細なコンテキストへの意識はスゴイ.
  • 関野さん(まとめ)
    • 人間とは何か,私とは何か.
    • 世界中にくまなく広がり,環境の中・文化の中で人間とは何かを明らかにする.
    • 環境/紛争/資源等々の問題にも文化人類学的手法は有効.

参加シンポジウム等の整理

年度末ですし...

2003年末頃から参加した研究会やシンポジウムをピックアップしてみました.

当時のメモを元に,ヒマを見ては詳細や私見を公開して行こうと思っています.アップは当時の日付に併せて行うと思いますので,都度新しいエントリとしてご紹介します.

既にこのblogで紹介したイベントに関しては,ここのblogのリンクを貼っています.

■2004年■2005年
■2006年
■2007年
■2008年

あれ...なんかもっといろいろ参加した気がするんだけどなぁ...

画像電子学会 第6回 画像ミュージアム研究会

2008/2/29(金),画像電子学会の第6回 画像ミュージアム研究会(pdf)に行って来ました.

発表は4件と少なめながら,非常に有意義な議論に参加することができました.

以下,参加レポです.

※レポはryojin3の所感であり,講演者の意見・意図が100%反映されているとは限りません!その点ご注意くださいませ.

※今回は,有料の研究会だったため(資料代なので問題ないとは思いますが),内容については簡単にしか書いていません.詳細は画像電子学会Webサイトもしくは研究会Webサイトでご確認下さい.情報があまりないかもしれませんケド...



報告
  • タイトル:Font Museumの公開
  • 著者(○は発表者):○長村玄,小町祐史,上村圭介:情報規格調査会 SC34/WG2小委員会)

  • Font Museumについて.その問題意識や意義について.
    • 実際の活字の収蔵の問題
    • 活字のディジタル化の問題
    • ディジタル化することによる著作権の問題
    • ビジネスの方向性,等



報告
  • タイトル:進化計算アルゴリズムの視覚化と展示への応用
  • 著者(○は発表者):○田島悠史,桐山孝司:東京芸術大学大学院映像研究科




報告
  • タイトル:土器画像検索システムと展示への応用の検討
  • 著者(○は発表者):○茂呂優太,徳永幸生,杉山精:芝浦工業大学

  • 以下の超2次関数を使って,土器画像から特徴パラメータを取得し,補助パラメータ(ここでは省略)と合わせて土器画像を分類検索するシステム.
  • 上式において,各記号は以下を表す.
    • a1,a2,a3 は xyz 各軸における長さ
    • ε1,ε2 は xz・xy 各平面における角張り具合
    • k1,k2 は z 軸方向の先細り度合い
    • y = 0 として上式を使用している.
  • この式は,国立歴史民俗博物館の土器画像 200 枚に適用.
  • ペン入力やテンプレートを選択できるような UI を用意し,入力値と特徴を比較,適合結果を返す仕組み.
  • 国立歴史民俗博物館企画展示「弥生はいつから!?」で実証実験.
  • アンケートで評価.



報告
  • タイトル:部分的分類知識の統合による博物館情報の横断検索の提案
  • 著者(○は発表者):○山田 篤,小町祐史,安達文夫:京都高度技術研究所,大阪工業大学,国立歴史民俗博物館
  • 博物館同士の情報交換(横断検索)が目的.
  • 各館の分類知識を統合するポータルサイトを作って検索するのが望ましい.
  • 各館の分類知識の統合方法は,
    • 特定ジャンルの複数のコレクションに含まれる資料名称をもとに,分類語彙を設定.
    • 分類語彙中,他のコレクションと共通で現れた語がキー.
    • コレクション同士の類似度は以下の式で計算する.
      • AとBの共通語彙数×2 ÷ (Aの語彙数+Bの語彙数)
  • 類似度から見えてくるコレクションの関係を分析.
  • 今後は,分類知識の修正や更新の仕組みや,具体的な横断検索の仕組みを検討.