CERCA TROVA

日テレ「天才ダ・ヴィンチ 伝説の巨大壁画発見!」を見ました.
と言ってもたまたま見つけたので,1時間過ぎているあたりからの視聴です.

内容はだいたい以下のような感じでした.
美術解析学者のマウリッツィオ・セラチーニ博士は30年前、フィレンツェにあるヴェッキオ宮殿の広間を調査中、「五百人広間」を飾るヴァザーリの壁画の中に『CERCA TROVA』(探せよ、さらば見つからん)と書かれた小さな旗を見つけた。それは、500年前に失われたはずのダ・ヴィンチの巨大壁画「アンギアリの戦い」が、まさにここにあるという暗号であった。市当局の許可を受けた博士は、X線やレーダーなどの科学技術を駆使し、ヴァザーリの壁画を損傷することなく、その壁画の後ろに2cmほどのすき間があることを確認。さらに「アンギアリの戦い」の絵の輪郭や、絵の具の色まで解析している。

どらく2008.04.08,荒俣宏氏コラム

Seracini氏はEDITECHの中心人物で,カリフォルニア大学サンディエゴ校でCISA3というプロジェクトをやっているそうです.チラリと日本人スタッフも出てきて,おお,こんなところでも頑張っている日本人がいるのだなと少し感動しました.

なんだかいろいろ面白そうなことをしているようです.今度,もっと丁寧に見てみようと思います.

参考URL

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CRM: The CIDOC Conceptual Reference Model(1)

前回,ICOM/CIDOCの取り組み(2)で博物館情報用のデータモデルについて簡単に触れました.特に,「概念参照モデル」(CRM: the CIDOC Conceptual Reference Model)については以下のような説明を加え,

CRMとは,一言で言うと「オントロジを用いた情報記述の枠組み」になります.これまでの提案のようにスキーマ設計の指針(具体的なフィールド名等)となるガイドラインとは異なり,文化財に関する基本概念をオントロジを用いて記述するのです.

オントロジとは,これまた一言で言うならば,「分類体系と推論ルール集」になります.世界にあるモノを体系的に分類し,それらの関係性を記述するものがオントロジです.具体的には諸々の書き方がありますが,CRMではRDF/XMLを利用することになります.

更に,RDF/XMLについてエントリしました.

今回は,RDF/XMLに基づくCRMの詳細について書いてみたいと思います.

CRMの考え方

CRMは,「データベースにどのような情報(フィールド名)を記述すべきか」を言及したものではありません.文化財の管理に対して,既に何らかのデータベースが動いている状態を前提としており,これらのデータベースから,洩れがなく,かつ発見的にデータを統合・交換するための「枠組み」を提供しようというものです.

例えば,ある所蔵品管理データベースでは,管理項目として「作品の名称」「作者」「年代」が管理されているとします.CRMでは,「「作品の名称」は「作者」によって「年代」に作られた」といったような項目間の関係性(RDF/XMLの文)を作り,このデータベースが持つ情報に意味を与えます.他方,別の所蔵品管理データベースでは,「作品の名称」「出処」「関連文献」が管理されているとします.CRMでは「「作品の名称」は「出処」で見つかり,「関連文献」がある」といった関係性を作り,このデータベースが持つ情報に意味を与えます.双方の文をマージすると,「「作者」によって「年代」に作られた「作品の名称」は「出処」で見つかり,「関連文献」がある」という文になり,双方のデータベースが無理なく統合されるわけです.また,それぞれのデータベースから見れば,新たな項目が発見されたとも言えるわけです.

実際にはデータベースはもっと複雑な構造をしており,また管理項目も多種多様です.しかし,概念(上の例ではデータベースの管理項目.ただし概念=管理項目ではない)の関係性を表現し,その関係性を用いてデータの統合や交換の実現を目指したものがCRMと言うことができます.

具体例

では,以下にCRMの例を示します.これはDefinition of the CIDOC CRMのサンプル例を参考に作ったものです.

CRMの最新バージョンは,2008年4月12日現在,4.2.1(あれ? 少し前に調べた時は4.2.2だったような...)で,84のエンティティ,141のプロパティが定義されています.CRMではドメインで使用される概念クラスをエンティティと呼び,エンティティ間の関係をプロパティと呼びます.



この例では,空間情報(文化財の所在)を表現するため,
  • E39 Actor(行為体:個人・グループ等,資料に関わりを持つ人)
  • E51 Contact Point(問い合わせ先:メールアドレスや電話番号,住所等)
  • E41 Appellation(呼称:名称.数値や文字列等)
  • E53 Place(場所)
  • E70 Things(もの:識別可能な単位)
の5つのエンティティを中心に複数のエンティティが階層構造で表現され,かつその関係がプロパティで記述されています.

ツール

CRM本家のToolsでは,各種ツールが公開されています.

可視化ツール(svg file)
  • CRMで定義されるエンティティとプロパティを,ICS-FORTH RDF Suiteを使い,SVGで表現するツール.
  • ブラウザはIE(とAdobe SVG Viewer)を用いないとパースエラーが出るので注意.
  • CRMのバージョンは3.2.
変換ツール
  • XML to RDF translator(zip-file)
    • XMLからRDFに変換するツールを用い,CRMと互換のあるRDFを出力する.
    • コマンドラインベースのツール.シンプルで良さそう.
  • CRM-XML mapping Utility(zip-file)
    • Accessで作られたツール.
    • 設定がよくわからない.設定をスキップして実行しようとしたら OLE サーバと ActiveX コントロールのエラーが出た.
チュートリアル(マッピング関係)
まとめ

今回は,まずCRMの考え方を示しました.次に具体例とツールの説明を交えながら,CRMの概要について書きました.次回は実際にツールを使い,どのようにデータを作っていくのか書いてみたいと思います.

参考文献

  • 本家
    • Definition of the CIDOC CRM
    • Definition of the CIDOC object-oriented Conceptual Reference Model
    • Definition of the CIDOC object-oriented Conceptual Reference Model and Crossreference Manual

文化財の輸送

先日(年度末なので,だいぶ前...),東京国立博物館「国宝 薬師寺展」を見てきました.

さすがに日光月光は(見ている人も含めて)すごい迫力でした.私が気に入ったのは特に背中.丸みを帯びて,優しい感じがしました(普段見ることができないという思いがそう感じさせたのかもしれませんケド).ただ,会場が全体的に赤っぽいデザインでなんとなく見づらかった.あれは昔のお寺をイメージしているのかしら.ライティングとか絶妙だっただけに個人的には赤い柱は邪魔だったなぁ.

それはそうと,この仏像たちは,はるばる薬師寺から上野までやってきたわけですが,輸送にはとても気を使ったことでしょう.

たまたまテレビを見ていたら,日光月光が日本通運のトラックで運び出されている様子が映っていました.日本通運はこの手の輸送には定評があるようです.


また,最近はあまり広報していないようですが,過去にはこんな広報がありました.


そして,驚きなのは厚生労働省が行っている「現代の名工」という卓越した技能者に送る賞を取ってたりするんです.2回も!


うん.

なんか日通の回し者っぽくなってきちゃいましたね.でも,現代の名工で美術品梱包輸送技能者が選ばれたのはこれまで日通しかいないそうです.

今回は日通の宣伝(!?)がメインになってしまいましたが,今度は保険や輸送時の技術(揺れの吸収とか湿度・温度管理等)についてもいろいろ調べてみたいと思っています.