ETV特集「フィールドへ異文化の知をひらく」を見る

先ほど,国立民族学博物館文化人類学に関するテレビ番組を見ました.


直接的に博物館情報学とはリンクしないかもしれませんが,異文化/多文化を理解し,共生するための手法である「文化人類学」は,様々な異種データ群をメタデータを介して交換・統合していく世界と似たものを感じ,またそういう世界は博物館情報学の一側面であると感じたので,エントリしてみます.

残念ながら,途中(22:30くらい)からの視聴なので,前半部はどういう放送だったのかわかりません(^^; 以下,後半部のまとめです.

■研究する側される側の関係
  • 例1:アイヌの踊り(=文化)を博物館を介して発信する.
  • 例2:ペルーの博物館は日本人が建てて,運営は地元の人.
  • 遺物(の意味)とは,語り/昔の言い伝え/地元の人々の記憶等との併せて考えるもの.また,その活用も大事.
  • 風土を作るには,土の人(→地元民)と風の人(→旅人)がお互いにいい影響をしあうことが大事.
  • 他者との関係・認識のあり方は,対話・時間と空間の共有を通して少しずつ変わっていくしかない.
■異文化理解・多文化共生を深めるには
  • 松園さん
    • 文化人類学者は土地に入り,土地の人達とともに生活をする.最初は土地のことがよくわからないが,だんだん分かってくる.謎解きの面白さのように,忍耐強く,人に寛容である必要がある.
  • 鷲田さん
    • 異文化理解や多文化共生には,他者と考えや気持ちが同じになるということではない.むしろ,交われば交わるほど,お互いの差異が際立ってくる.そしてその事実を受け入れることが大事.フィールドワークを通して,他者の世界観を身体的な感覚で汲み取ろうとするのは重要なこと.
  • 関野さん
    • 文化相対主義とは,上下関係ではなく,文化を相対的に見るもの.
  • 松園さん
    • 多文化共生への努力は,様々な味付けの料理を食べられるということ.

■広がる研究フィールド
  • 例1:タイ・ランプーンにおける日本文化とタイ文化の比較,平井京之助さん
    • 1980年末に日本企業のエレクトロニクス関係の工場ができたことによる,周辺地域への影響について調査.
    • 異文化が地域に与える影響(いい面も悪い面も含めて)を調べることで,双方が良くなる手助けをする.
    • グローバル化→文化人類学のフィールドの広がり→調査対象と研究対象/内容が広がる.
  • 例2:パプアニューギニアの津波(1998)と新潟県中越沖地震(2004)を通した,災害の復興調査,林勲男さん
    • パプアニューギニア津波では,支援がNGOの名声のために利用されたり,パプアニューギニア文化を無視した支援が一部であった.
    • 新潟では,被災者個々人の思いを聞いて回り,体験記録集の作成した.このような記録は震災の教訓・知恵を次の世代に伝える手助けとなる.
    • ネットワーク作りの大切さ:地元外NGO+地元=復興の企画等(震央米).
    • 林氏の目指すところ
      • 防災を含めた人々の安全な暮らしの確保を考える.
      • 行政,ボランティア,研究等様々な立場の人が知恵を出し合って取り組む分野.
      • 文化人類学的には,災害現場の状況理解をまとめ,次世代に伝えることが大事.
  • 例3:医療分野や開発協力への適応,白川千尋さん
    • マラリアの感染には有効予防接種がないので,蚊帳が有効だが,現地では多くの人が蚊帳を使ってくれなかった.
    • 蚊帳を配るだけでなく,それを使ってもらえるような方策を考えることが大事.
    • 現地には多様なニーズがある.それにあったきめ細かいサポートを提供するため,対象者のありようをきめ細かく見ておく必要がある.ここで文化人類学的な視点が重要で,「開発人類学」が形成されつつある.
    • 開発を成功させるためのブローカーになるのではなく,以下が大事.
      1. 地域の社会情報・文化情報を提供し,
      2. 常識を別の角度から見直して相対化する.
■文化人類学の課題
  • 鷲田さん
    • 今の文化人類学
      • グローバル化→複雑なファクター/コンテキストが絡み合っている.
      • コンテキストの多層性・多次元性→文化を多元的に調べる.
    • この状況で,文化人類学は野生的でなくなってきた.
  • 松園さん
    • 文化人類学は長い歴史の中で全体として人間を見る.現代は対象の外から様々な要素が入り込み,対象が複雑になっている.その状態で文化人類学者は刻々と移り変わる対象に目を奪われ,長いスパンで考えられにくくなってきている.これは問題だ.
  • 鷲田さん
    • そうは言っても,複雑性への感覚はスゴイ.繊細なコンテキストへの意識はスゴイ.
  • 関野さん(まとめ)
    • 人間とは何か,私とは何か.
    • 世界中にくまなく広がり,環境の中・文化の中で人間とは何かを明らかにする.
    • 環境/紛争/資源等々の問題にも文化人類学的手法は有効.

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