CERCA TROVA

日テレ「天才ダ・ヴィンチ 伝説の巨大壁画発見!」を見ました.
と言ってもたまたま見つけたので,1時間過ぎているあたりからの視聴です.

内容はだいたい以下のような感じでした.
美術解析学者のマウリッツィオ・セラチーニ博士は30年前、フィレンツェにあるヴェッキオ宮殿の広間を調査中、「五百人広間」を飾るヴァザーリの壁画の中に『CERCA TROVA』(探せよ、さらば見つからん)と書かれた小さな旗を見つけた。それは、500年前に失われたはずのダ・ヴィンチの巨大壁画「アンギアリの戦い」が、まさにここにあるという暗号であった。市当局の許可を受けた博士は、X線やレーダーなどの科学技術を駆使し、ヴァザーリの壁画を損傷することなく、その壁画の後ろに2cmほどのすき間があることを確認。さらに「アンギアリの戦い」の絵の輪郭や、絵の具の色まで解析している。

どらく2008.04.08,荒俣宏氏コラム

Seracini氏はEDITECHの中心人物で,カリフォルニア大学サンディエゴ校でCISA3というプロジェクトをやっているそうです.チラリと日本人スタッフも出てきて,おお,こんなところでも頑張っている日本人がいるのだなと少し感動しました.

なんだかいろいろ面白そうなことをしているようです.今度,もっと丁寧に見てみようと思います.

参考URL

コンタクト情報

お知らせです.

コンタクト情報をサイドバーに付けました.
メールは晒すとスパムが多いので,画像にしてあります.
画像はE-mail icon generatorで作りました.

CRM: The CIDOC Conceptual Reference Model(1)

前回,ICOM/CIDOCの取り組み(2)で博物館情報用のデータモデルについて簡単に触れました.特に,「概念参照モデル」(CRM: the CIDOC Conceptual Reference Model)については以下のような説明を加え,

CRMとは,一言で言うと「オントロジを用いた情報記述の枠組み」になります.これまでの提案のようにスキーマ設計の指針(具体的なフィールド名等)となるガイドラインとは異なり,文化財に関する基本概念をオントロジを用いて記述するのです.

オントロジとは,これまた一言で言うならば,「分類体系と推論ルール集」になります.世界にあるモノを体系的に分類し,それらの関係性を記述するものがオントロジです.具体的には諸々の書き方がありますが,CRMではRDF/XMLを利用することになります.

更に,RDF/XMLについてエントリしました.

今回は,RDF/XMLに基づくCRMの詳細について書いてみたいと思います.

CRMの考え方

CRMは,「データベースにどのような情報(フィールド名)を記述すべきか」を言及したものではありません.文化財の管理に対して,既に何らかのデータベースが動いている状態を前提としており,これらのデータベースから,洩れがなく,かつ発見的にデータを統合・交換するための「枠組み」を提供しようというものです.

例えば,ある所蔵品管理データベースでは,管理項目として「作品の名称」「作者」「年代」が管理されているとします.CRMでは,「「作品の名称」は「作者」によって「年代」に作られた」といったような項目間の関係性(RDF/XMLの文)を作り,このデータベースが持つ情報に意味を与えます.他方,別の所蔵品管理データベースでは,「作品の名称」「出処」「関連文献」が管理されているとします.CRMでは「「作品の名称」は「出処」で見つかり,「関連文献」がある」といった関係性を作り,このデータベースが持つ情報に意味を与えます.双方の文をマージすると,「「作者」によって「年代」に作られた「作品の名称」は「出処」で見つかり,「関連文献」がある」という文になり,双方のデータベースが無理なく統合されるわけです.また,それぞれのデータベースから見れば,新たな項目が発見されたとも言えるわけです.

実際にはデータベースはもっと複雑な構造をしており,また管理項目も多種多様です.しかし,概念(上の例ではデータベースの管理項目.ただし概念=管理項目ではない)の関係性を表現し,その関係性を用いてデータの統合や交換の実現を目指したものがCRMと言うことができます.

具体例

では,以下にCRMの例を示します.これはDefinition of the CIDOC CRMのサンプル例を参考に作ったものです.

CRMの最新バージョンは,2008年4月12日現在,4.2.1(あれ? 少し前に調べた時は4.2.2だったような...)で,84のエンティティ,141のプロパティが定義されています.CRMではドメインで使用される概念クラスをエンティティと呼び,エンティティ間の関係をプロパティと呼びます.



この例では,空間情報(文化財の所在)を表現するため,
  • E39 Actor(行為体:個人・グループ等,資料に関わりを持つ人)
  • E51 Contact Point(問い合わせ先:メールアドレスや電話番号,住所等)
  • E41 Appellation(呼称:名称.数値や文字列等)
  • E53 Place(場所)
  • E70 Things(もの:識別可能な単位)
の5つのエンティティを中心に複数のエンティティが階層構造で表現され,かつその関係がプロパティで記述されています.

ツール

CRM本家のToolsでは,各種ツールが公開されています.

可視化ツール(svg file)
  • CRMで定義されるエンティティとプロパティを,ICS-FORTH RDF Suiteを使い,SVGで表現するツール.
  • ブラウザはIE(とAdobe SVG Viewer)を用いないとパースエラーが出るので注意.
  • CRMのバージョンは3.2.
変換ツール
  • XML to RDF translator(zip-file)
    • XMLからRDFに変換するツールを用い,CRMと互換のあるRDFを出力する.
    • コマンドラインベースのツール.シンプルで良さそう.
  • CRM-XML mapping Utility(zip-file)
    • Accessで作られたツール.
    • 設定がよくわからない.設定をスキップして実行しようとしたら OLE サーバと ActiveX コントロールのエラーが出た.
チュートリアル(マッピング関係)
まとめ

今回は,まずCRMの考え方を示しました.次に具体例とツールの説明を交えながら,CRMの概要について書きました.次回は実際にツールを使い,どのようにデータを作っていくのか書いてみたいと思います.

参考文献

  • 本家
    • Definition of the CIDOC CRM
    • Definition of the CIDOC object-oriented Conceptual Reference Model
    • Definition of the CIDOC object-oriented Conceptual Reference Model and Crossreference Manual

文化財の輸送

先日(年度末なので,だいぶ前...),東京国立博物館「国宝 薬師寺展」を見てきました.

さすがに日光月光は(見ている人も含めて)すごい迫力でした.私が気に入ったのは特に背中.丸みを帯びて,優しい感じがしました(普段見ることができないという思いがそう感じさせたのかもしれませんケド).ただ,会場が全体的に赤っぽいデザインでなんとなく見づらかった.あれは昔のお寺をイメージしているのかしら.ライティングとか絶妙だっただけに個人的には赤い柱は邪魔だったなぁ.

それはそうと,この仏像たちは,はるばる薬師寺から上野までやってきたわけですが,輸送にはとても気を使ったことでしょう.

たまたまテレビを見ていたら,日光月光が日本通運のトラックで運び出されている様子が映っていました.日本通運はこの手の輸送には定評があるようです.


また,最近はあまり広報していないようですが,過去にはこんな広報がありました.


そして,驚きなのは厚生労働省が行っている「現代の名工」という卓越した技能者に送る賞を取ってたりするんです.2回も!


うん.

なんか日通の回し者っぽくなってきちゃいましたね.でも,現代の名工で美術品梱包輸送技能者が選ばれたのはこれまで日通しかいないそうです.

今回は日通の宣伝(!?)がメインになってしまいましたが,今度は保険や輸送時の技術(揺れの吸収とか湿度・温度管理等)についてもいろいろ調べてみたいと思っています.

ディジタルアーカイブの長期利用に関するシンポジウム

3/14(金),筑波大学まで行って来ました.IPSJの全国大会が開催されており,活気を帯びていましたが,学び舎は古くなり,やや疲れた感じがしました.

お目当ては以下のシンポジウム.

ディジタルアーカイブの長期利用に関するシンポジウム

プログラム

13:00 - 15:00 講演
  • Short Introduction, Heike Neuroth (Goettingen State and University Library, Max Planck Digital Library Berlin)
  • Organizational Issues: Trusted Repositories/Archives, Policy. Stefan Strathmann (Goettingen State and University Library)
  • Technical Issues: kopal, repository systems, ingest, validation. Heike Neuroth
15:30-17:00 ディスカッション(ラウンドテーブル)
  • ゲッチンゲン大学+国立国会図書館+国立公文書館+筑波大
後半のディスカッションが見所かと思いますが,ディスカッション前の休憩時間に恩師を訪ねたのが運の尽き.久しぶりの再開に話が弾んでしまい,後半まるごとブッチしてしまいました.何しに筑波まで行ったんだか...ま,恩師の元気な姿が見れたから良しとするか.

なので,今回の投稿は前半部のみです.

Short Introduction, Heike Neuroth (Goettingen State and University Library, Max Planck Digital Library Berlin)

Organizational Issues: Trusted Repositories/Archives, Policy. Stefan Strathmann (Goettingen State and University Library)

Technical Issues: kopal, repository systems, ingest, validation. Heike Neuroth
  • 当面の課題
    • ディジタル情報は元来複雑
    • 個人の要求は全く異種
    • 一般的な品質の評価基準は抽象的
    • フレームワークは実装レベルと程遠い
    • リポジトリソフトは複雑
    • システムの品質は個々の設定に大きく依存する
    • 製品のドキュメントは依然問題
  • Decision Process
    1. 参照モデル,技術,ユースケースから評価基準カタログ(Criteria Catalog)を作る.
    2. 市場のアーカイブ製品を調べる.
    3. 1,2をRatingし,製品比較を行い,ランク付けをする.
    4. 3と併せて個々の要求分析等を行い,
    5. 製品を選定する
  • 評価カタログの詳細(やや手抜き)
    • カタログ構造
    • 一般的な属性
    • 機能的な属性(取り込み,アクセス,ストレージ,アドミン)
    • 非機能的な属性(コスト,品質)
  • 具体例

前半戦 質疑
[Q]アーカイブへの多様なアクセスはどう考えている?
[A]アーカイブ用とアクセス用は分けて考えたほうが良い.

[Q]州と大学の図書館ということだが,州図書館としての役割は?(リポジトリシステムの中には高いものもある.)
[A]システム導入時のコンサルティング代行,システムレンタル等の運用を通して市町村等予算の少ない図書館のサポートができたら良いと考えている.

[Q]TRAC,DRAMBORA,nestorの違いを教えて欲しい.
[A]nestorとTRACは自己評価用.DRAMBORAはリスク評価用.

[C]ディジタルアーカイブは,評価・選別・廃棄のサイクルが大事.永久に残すものとそうでないものに分ける必要性を感じた.

[Q]アクセスフォーマットはネットワークのものとアーカイブのものは異なるのか?
[A]異なる.例えば,原本はtiffで,公開はjpgで,のように.

[Q]原本をサポートするツール(読みづらい昔の文字を現代の文字に変換するスクリプトのようなもの等)を用いる場合があるが,これもアーカイブの対象か?
[A]対象だ.ただし,原本とツールは異なることを理解する必要がある.


後半のディスカッションの前に,国立国会図書館のディジタルアーカイブの話と国立公文書館のディジタルアーカイブの話があったかと思われます(資料は手元にある).しかし,先の説明の通り,講演を聞いていないので,今回は割愛させて頂きます.

ETV特集「フィールドへ異文化の知をひらく」を見る

先ほど,国立民族学博物館文化人類学に関するテレビ番組を見ました.


直接的に博物館情報学とはリンクしないかもしれませんが,異文化/多文化を理解し,共生するための手法である「文化人類学」は,様々な異種データ群をメタデータを介して交換・統合していく世界と似たものを感じ,またそういう世界は博物館情報学の一側面であると感じたので,エントリしてみます.

残念ながら,途中(22:30くらい)からの視聴なので,前半部はどういう放送だったのかわかりません(^^; 以下,後半部のまとめです.

■研究する側される側の関係
  • 例1:アイヌの踊り(=文化)を博物館を介して発信する.
  • 例2:ペルーの博物館は日本人が建てて,運営は地元の人.
  • 遺物(の意味)とは,語り/昔の言い伝え/地元の人々の記憶等との併せて考えるもの.また,その活用も大事.
  • 風土を作るには,土の人(→地元民)と風の人(→旅人)がお互いにいい影響をしあうことが大事.
  • 他者との関係・認識のあり方は,対話・時間と空間の共有を通して少しずつ変わっていくしかない.
■異文化理解・多文化共生を深めるには
  • 松園さん
    • 文化人類学者は土地に入り,土地の人達とともに生活をする.最初は土地のことがよくわからないが,だんだん分かってくる.謎解きの面白さのように,忍耐強く,人に寛容である必要がある.
  • 鷲田さん
    • 異文化理解や多文化共生には,他者と考えや気持ちが同じになるということではない.むしろ,交われば交わるほど,お互いの差異が際立ってくる.そしてその事実を受け入れることが大事.フィールドワークを通して,他者の世界観を身体的な感覚で汲み取ろうとするのは重要なこと.
  • 関野さん
    • 文化相対主義とは,上下関係ではなく,文化を相対的に見るもの.
  • 松園さん
    • 多文化共生への努力は,様々な味付けの料理を食べられるということ.

■広がる研究フィールド
  • 例1:タイ・ランプーンにおける日本文化とタイ文化の比較,平井京之助さん
    • 1980年末に日本企業のエレクトロニクス関係の工場ができたことによる,周辺地域への影響について調査.
    • 異文化が地域に与える影響(いい面も悪い面も含めて)を調べることで,双方が良くなる手助けをする.
    • グローバル化→文化人類学のフィールドの広がり→調査対象と研究対象/内容が広がる.
  • 例2:パプアニューギニアの津波(1998)と新潟県中越沖地震(2004)を通した,災害の復興調査,林勲男さん
    • パプアニューギニア津波では,支援がNGOの名声のために利用されたり,パプアニューギニア文化を無視した支援が一部であった.
    • 新潟では,被災者個々人の思いを聞いて回り,体験記録集の作成した.このような記録は震災の教訓・知恵を次の世代に伝える手助けとなる.
    • ネットワーク作りの大切さ:地元外NGO+地元=復興の企画等(震央米).
    • 林氏の目指すところ
      • 防災を含めた人々の安全な暮らしの確保を考える.
      • 行政,ボランティア,研究等様々な立場の人が知恵を出し合って取り組む分野.
      • 文化人類学的には,災害現場の状況理解をまとめ,次世代に伝えることが大事.
  • 例3:医療分野や開発協力への適応,白川千尋さん
    • マラリアの感染には有効予防接種がないので,蚊帳が有効だが,現地では多くの人が蚊帳を使ってくれなかった.
    • 蚊帳を配るだけでなく,それを使ってもらえるような方策を考えることが大事.
    • 現地には多様なニーズがある.それにあったきめ細かいサポートを提供するため,対象者のありようをきめ細かく見ておく必要がある.ここで文化人類学的な視点が重要で,「開発人類学」が形成されつつある.
    • 開発を成功させるためのブローカーになるのではなく,以下が大事.
      1. 地域の社会情報・文化情報を提供し,
      2. 常識を別の角度から見直して相対化する.
■文化人類学の課題
  • 鷲田さん
    • 今の文化人類学
      • グローバル化→複雑なファクター/コンテキストが絡み合っている.
      • コンテキストの多層性・多次元性→文化を多元的に調べる.
    • この状況で,文化人類学は野生的でなくなってきた.
  • 松園さん
    • 文化人類学は長い歴史の中で全体として人間を見る.現代は対象の外から様々な要素が入り込み,対象が複雑になっている.その状態で文化人類学者は刻々と移り変わる対象に目を奪われ,長いスパンで考えられにくくなってきている.これは問題だ.
  • 鷲田さん
    • そうは言っても,複雑性への感覚はスゴイ.繊細なコンテキストへの意識はスゴイ.
  • 関野さん(まとめ)
    • 人間とは何か,私とは何か.
    • 世界中にくまなく広がり,環境の中・文化の中で人間とは何かを明らかにする.
    • 環境/紛争/資源等々の問題にも文化人類学的手法は有効.

参加シンポジウム等の整理

年度末ですし...

2003年末頃から参加した研究会やシンポジウムをピックアップしてみました.

当時のメモを元に,ヒマを見ては詳細や私見を公開して行こうと思っています.アップは当時の日付に併せて行うと思いますので,都度新しいエントリとしてご紹介します.

既にこのblogで紹介したイベントに関しては,ここのblogのリンクを貼っています.

■2004年■2005年
■2006年
■2007年
■2008年

あれ...なんかもっといろいろ参加した気がするんだけどなぁ...

画像電子学会 第6回 画像ミュージアム研究会

2008/2/29(金),画像電子学会の第6回 画像ミュージアム研究会(pdf)に行って来ました.

発表は4件と少なめながら,非常に有意義な議論に参加することができました.

以下,参加レポです.

※レポはryojin3の所感であり,講演者の意見・意図が100%反映されているとは限りません!その点ご注意くださいませ.

※今回は,有料の研究会だったため(資料代なので問題ないとは思いますが),内容については簡単にしか書いていません.詳細は画像電子学会Webサイトもしくは研究会Webサイトでご確認下さい.情報があまりないかもしれませんケド...



報告
  • タイトル:Font Museumの公開
  • 著者(○は発表者):○長村玄,小町祐史,上村圭介:情報規格調査会 SC34/WG2小委員会)

  • Font Museumについて.その問題意識や意義について.
    • 実際の活字の収蔵の問題
    • 活字のディジタル化の問題
    • ディジタル化することによる著作権の問題
    • ビジネスの方向性,等



報告
  • タイトル:進化計算アルゴリズムの視覚化と展示への応用
  • 著者(○は発表者):○田島悠史,桐山孝司:東京芸術大学大学院映像研究科




報告
  • タイトル:土器画像検索システムと展示への応用の検討
  • 著者(○は発表者):○茂呂優太,徳永幸生,杉山精:芝浦工業大学

  • 以下の超2次関数を使って,土器画像から特徴パラメータを取得し,補助パラメータ(ここでは省略)と合わせて土器画像を分類検索するシステム.
  • 上式において,各記号は以下を表す.
    • a1,a2,a3 は xyz 各軸における長さ
    • ε1,ε2 は xz・xy 各平面における角張り具合
    • k1,k2 は z 軸方向の先細り度合い
    • y = 0 として上式を使用している.
  • この式は,国立歴史民俗博物館の土器画像 200 枚に適用.
  • ペン入力やテンプレートを選択できるような UI を用意し,入力値と特徴を比較,適合結果を返す仕組み.
  • 国立歴史民俗博物館企画展示「弥生はいつから!?」で実証実験.
  • アンケートで評価.



報告
  • タイトル:部分的分類知識の統合による博物館情報の横断検索の提案
  • 著者(○は発表者):○山田 篤,小町祐史,安達文夫:京都高度技術研究所,大阪工業大学,国立歴史民俗博物館
  • 博物館同士の情報交換(横断検索)が目的.
  • 各館の分類知識を統合するポータルサイトを作って検索するのが望ましい.
  • 各館の分類知識の統合方法は,
    • 特定ジャンルの複数のコレクションに含まれる資料名称をもとに,分類語彙を設定.
    • 分類語彙中,他のコレクションと共通で現れた語がキー.
    • コレクション同士の類似度は以下の式で計算する.
      • AとBの共通語彙数×2 ÷ (Aの語彙数+Bの語彙数)
  • 類似度から見えてくるコレクションの関係を分析.
  • 今後は,分類知識の修正や更新の仕組みや,具体的な横断検索の仕組みを検討.

東博公開研修会「ミュージアム情報の制作・管理・活用」

東京国立博物館の公開研修会「ミュージアム情報の制作・管理・活用」に行って来ました.

閉会の挨拶で,地味なタイトルながら非常に骨太な議論ができたのでは,みたいなことを聞き,まさにその通りだと実感しました.

以下,参加レポです.

※レポはryojin3の所感であり,講演者の意見・意図が100%反映されているとは限りません!その点ご注意くださいませ.



基調講演
  • 題目:情報で活きるミュージアム
  • 発表者:笠羽晴夫氏(財団法人デジタルコンテンツ協会 研究主幹)


1.デジタルアーカイブの歴史
  • 1990年代初頭の電子博物館・電子美術館・電子図書館とマルチメディアの話から,現在のネットワーク環境での情報蓄積公開についての概論.
2.これからのデジタルアーカイブ





報告
  • 題目:ミュージアム情報と学芸業務
  • 発表者:村田良二氏(東京国立博物館 情報課 研究員)

1.資料DBと学芸業務について
  • 学芸業務において,資料DBはその根幹をなすDB.ところが,DBのデータ入力の難しさは以下のデータが物語っている.
  • 平成19年の文化庁調査によれば,公立博物館の所蔵資料と学芸員数の中央値は6000点/3人.更に細かく分類すると,以下のようになる.
    • 総合博物館 30000点/5人
    • 歴史系博物館 12000点/4人
    • 美術館 1626点/3人
  • また,常設展の展示の平均値は以下のようになる.
    • 総合博物館 1000点
    • 歴史系博物館 446点
    • 美術館 275点
  • 作品に係る学芸系業務
    • 受け入れ,調査研究,展示,修理,貸借等.
  • 相補的関係
    • 収蔵品DB→データ活用→業務がスムースに進行する.
    • 業務中→記録の蓄積→収蔵品DBが豊かになる.
  • 収蔵品DBの問題
    • 「古い貧弱なデータ」は「使われない」→悪循環.
  • 収蔵品DBの活用
    • 「最新の充実したデータ」は「積極的活用」される→好循環.
    • 定型的作業の軽減=システムを使うと楽になる!はインセンティブ.
    • コピペを減らす.
    • 予定履歴管理は作品ごと,時期ごと,展示室ごと,,など様々な角度から見たいので,,,一元管理.
2.業務プロセスの分析
  • 具体的に収蔵品DBを活用するためには業務プロセス分析が重要.
  • ラフなBPM(Business Process Modeling)の活用.
    • 共通要素
      • 期間,場所,関係者 → 全て収蔵品DBに関連する.
    • 計画の進行
      • 計画から変更や破棄まで含めた業務のライフサイクルの把握.
  • 共通要素(現在取り組んでいるもの)
    • 一覧と検索
    • リスト編集
    • プロセス管理
    • 定型文書出力
    • これらを実装したシステムのデモ
3.システム構築の実際
  • インセンティブがないと,利用者は使わない.
  • 段階的な構築が大事.
    • 無理のない移行(慣習の尊重,学習障壁の低減)
    • 身近な(適切な)目的設定(期待感)
  • 技術的課題
    • モジュール化→APIの公開とか,Webサービス or SOA→他館との連携等.
    • URLの適切な利用.
    • データ参照はgetをもっと活用すべき.





報告
  • 題目:デジタル画像情報の基礎
  • 発表者:鈴木卓治氏(国立歴史民俗博物館 准教授)
1.画像の基本
  • 画像の基本的な話.
  • 最近は光の定義として,sRGBが一般的らしい.
  • よく記録媒体の寿命が議論されているが,フォーマットの寿命のほうが致命的で大問題だ.
2.デジカメの基本
  • デジカメのCF配列は,RGBかCMYが基本.
3.おまけ
  • マクベスのカラーチャートはいい.
# 他にももっと有益なことを話されていた気がしたが,メモし忘れました...




報告
  • 題目:デジタル情報管理の実務
  • 発表者:田良島哲氏(東京国立博物館 情報管理室長)

1.博物館にある非デジタル情報
  • テキスト:調書,台帳・目録,解説文・ニュースレター,紀要・報告書・図録.
  • 静止画:写真,図面・スケッチ.
  • 動画:映画フィルム・ビデオテープ.
  • 音声:オーディオテープ・レコード.
2.デジタル化のメリット
  • 処理の早さ.
  • 迅速・柔軟な検索→新たな視点による発見.
  • 蓄積が容易.
  • 流通の簡便さ.
  • 利用範囲の広さ
3.ネットワーク化のメリット
  • 情報の流通と共有が進む.
    • 情報が多くの目で評価される.新しい発見.
  • コミュニケーション環境が改善.
    • むだな連絡調整の削減.
    • 事務処理の迅速化.
    • 新たな出会い(人-人,人-モノ,モノ-モノ).
4.何故活用されない?
  • 素材が供給されない.
    • ミュージアム側の人・資金不足,技術支援がない.
  • 制作者の層の薄さ・知的力量不足.
    • 素材(文化遺産)の知名度頼り,素材の切り貼りに終わる例,コンテンツとしての魅力に欠ける.
  • 需要が起こらない(選好の対象外).
5.デジタル情報作成の基本
  • 真正性がある.
    • データの根拠を明確に.
  • 長く使える.
    • 汎用的なデータ形式,非依存.
  • できるだけたくさん.
    • 利用には品揃えが大事.
6.データ本位の情報蓄積
  • 技術に振り回されない.標準的なもの.
7.何をすればいいか
  • 手持ちの資産の棚卸し.
    • 使えるかどうかの水準把握,メタデータの把握.著作権,肖像権,パブリシティ権.
  • 機会を逃さず.
    • 予算が付いたら.
    • アプリ依存データ,事業に必要な部分的データにしか作らない(=情報の陳腐化),はダメ.
  • 日常的に.
    • 業務の中でデジタルデータ作成を組み込む.作らざるを得ない or インセンティブ.
    • 入力には知識が必要.
8.東博の事例
  • 受け入れ時に撮影(研究員)→ネット+DB→情報課で管理.





報告
  • 題目:ミュージアム・ウェブサイトの運用
  • 発表者:小林徹氏(東京国立博物館 広報室 主任)

1.東博のウェブサイトについて





報告
  • 題目:「イメージアーカイブ事業」の展開
  • 発表者:手嶋毅氏(株式会社DNPアーカイブ・コム 常務取締役)
1.DNPアーカイブコムとは
  • DNPアーカイブコムのデジタルアーカイブ
  • デジタル化は,フィルムから起こすのと,デジカメ撮影と2パターンある.
2.エージェンシーの公共/営業サービス
  • 公共的な立場として
    • 収蔵品の目録DB作成,広く無料で情報提供,国の文化資産の記録.
  • 営業的な立場として
    • 上記を達成するための資金獲得,出版社への提供,世界的に事業/技術的に優位な立場を確保.
3.欧米市場
4.その他
  • 東博イメージアーカイブは,利用形態や利用量に応じて様々な課金をする.
  • 権利のクリアランスが重要.
  • イメージを用いた様々な事業展開も行っている.





報告
  • 題目:アーカイブデータから公開コンテンツへ
  • 発表者:山崎千代乃氏(凸版印刷株式会社 文化事業推進本部デジタルコンテンツ部 課長)

1.情報の公開と利用
  • 印刷,DB+検索システム,閲覧システム,Web,メディア
  • 誰に何を何故伝えるか,で変わってくる
2.VR
  • 利点
    • 可視化,仮想体験(遺跡とか行けない場所とか)復元
    • 再現(欠損や当時の状況.データに根ざして)
3.凸版印刷のVR事業
4.TNM & TOPPAN ミュージアムシアター
最後のほうは疲れてしまってメモもだんだん適当に...




質疑
  • 東博の業務システムのコードは公開する?
    • 将来的には.まずは,業務の一般化モデル作りたい(どこかと共同研究).
  • APIのような形で公開する?
    • そのうち.前向きです.
  • 学芸員の展覧会用のtmpDBみたいなものは付けられる?
    • システムに収蔵品をまとめるリスト機能がある.これを拡張する必要がある.
  • これからのシステムはブラウザベースなの?
    • ユーザにとっては楽.外部公開でも応用できる.世の中の流れ.ただ,ブラウザはデメリットもあるので,場合によってはクライアントソフトを作る.
  • 東博はNDLの近代デジタルライブラリみたいな公開はするの?
    • 検討中.古典籍が数万のオーダーであり,かつマイクロフィルムがなくなりそうなので,デジタル化作業とインターフェースの検討中.
  • 田良島さんの発表のデジタル化で「たくさん作る」ってどういう意味?
    • モノの数が大事.利用者の選択の幅は広いほうが良い,という意味.メタデータも太っているほうがいいが,これは作るのが大変.





ここにまとめるだけでも相当時間を要しました.それだけ,議論の中身のある研修会だったのではないでしょうか.

保存科学 - Conservation Science

東京文化財研究所保存修復科学センターで研究雑誌「保存科学」を公開しています.昭和39年の創刊以来,現在までの全ての内容が公開されているようです.

以下,保存修復科学センターによる説明です.
「保存科学」では、所属研究員による文化財の保存と修復に関する科学的調査、受託研究報告などの論文報告および修復処置概方などを掲載しています。
昭和39年創刊、平成17年度は45号を発行しました。
創刊以来の全巻について、PDF版による配布サービスを行っています。
雑誌一覧はこちら→「保存科学」PDF版ダウンロード