阿修羅像の輸送技術

2009年3月29日の朝日新聞日曜版の日曜ナントカ学という記事で奈良・興福寺阿修羅像輸送技術について取り上げられていました.3/31の確認ではWeb版のほうではまだ紹介されていないようです.

また,探してみたら何点かニュース記事もありました.

  ※ニュースサイトはすぐページがリンク切れになるのでウェブ魚拓を取りました.

今回の輸送は東京国立博物館で開かれる展覧会に出展するためで,阿修羅像が寺を出るのは約半世紀振りだとか(前回は1952年・東京・日本橋三越で開かれた「奈良春日興福寺国宝展」).しかも,東京の次は福岡・九州国立博物館までお出かけし,奈良に帰るまでに2000キロ近くもの長旅をするそうです.


以前,当サイトでも文化財の輸送について軽く触れましたが,今回も輸送は日通が担当したようです.

今回の輸送技術のポイントは2点,「梱包」と「防振」だそうです.

■梱包
  • 三重構造のアルミボックス
    1. 本体を納める枠
    2. 1の枠を収納する内箱
    3. 2の内箱を収納する外箱
  • 本体(ニュースサイトの写真を見たほうがわかりやすいです)
    • 6本の腕:うす(極薄の中性紙/薄葉紙)を軽く巻き,紙のリボンでとめる
    • 腕下:アルミの添え木を数本配置
    • 腰:うすで保護し,プラスチック素材の緩衝材を巻き,更にさらしを巻く.それをアルミボックスにつながるアクリル板のコルセットでつなぐ
    • 顔:うすを軽く巻く
    • 他の部分:むき出し

■防振
  • 内箱の床下(外箱の床面)6箇所にアイソレータを配置し箱ごと振動を吸収
    • アイソレータ:直径1cmのワイヤーをコイル状にして2本のアルミ棒に巻き付けたもの
  • 当初,アルミボックス各面にアイソレータを取り付けて実験を行ったそうだが,一番振動の吸収ができたのは床面のみに取り付けた状態だった

かつてはミイラ上にぐるぐる巻きにして輸送したそうですが,近年では本体と梱包材が触れ合うことで発生する本体への負荷を軽減することに重点が置かれ,このような梱包・防振技術が適用されているそうです.こういう技術は科学と経験則に裏打ちされたザ・ノウハウと呼べるいい技術だと思います.

情報技術的な観点では,センサを用いた温室度管理,荷の揺れ度合い管理(閾値を超えたらドライバーや管理センターに知らせるとか),GPSを用いた輸送車管理(セキュリティ)等,様々なことが考えられますが,実際にはどれくらいやられているものなのでしょうか.

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