近代化産業遺産とアノテーション

地域コミュニティサイト「Lococom」"近代化産業遺産"特集サイトができたようです.
近代化産業遺産とは,経済産業省が認定する文化遺産群のことで,日本の産業近代化に貢献した建物や機器類の保存活用を目的としています.2007年度には,地域史・産業史を軸とした33のストーリーとそれに関連する575件の産業遺産が認定されています.
今回は経産省の「地域経済産業活性化対策調査」事業の一環で,Lococomを運営する株式会社ネクストが受託開発を行ったようです.そこでは,以下のような効果が期待されています.
  • コンテンツ掲載による,広範囲な近代化産業遺産の認知
  • 地元からの情報発信とクチコミ化による地域の活性化
現在は検証フェーズのようで,情報提供やクチコミを行うことの有効性・ビジネスモデルについて検討が行われているようです.

また,サイトにはモデル地域の特集ページも用意されています.群馬県桐生市をモデルに,近代化産業遺産コンテンツの提供のほか,商工会議所等と連携した観光情報(宿泊,飲食,施設,イベント情報等)が提供されています.

経産省のサイトから産業遺産のリストを入手できますが,せっかくなのでLococomの特集ページを使ってどのような遺産があるのか見てみたいと思います.特集ページではLococomが持つ機能(遺産の検索・閲覧・クチコミ投稿・クチコミ閲覧等)がそのまま使えるようになっています.

主な近代化産業遺産(順不同,ryojin3の興味順)
経産省では2008年度も引き続き前年度と異なる分野で「近代化産業遺産群 続33」として認定を行っており,こちらもLococomで公開予定だそうです.また,ネクストの受託は2009年3月末までですが,コンテンツは4月以降も掲載するそうです.これら一連の動きは,経済産業省 経済産業政策局の活用委員会の議事(ページの一番下)を参照することで詳細情報が得られます.

さて.このような事例は,文化遺産情報にアノテーションを活用する好例なのではないでしょうか.

あるデータに対し,注釈データ(メタデータ)を付与することをアノテーションと言います.Java使いならご存知,クラスやメソッドに入れる,アレです.エラーチェックや加工はしませんし,「注釈」は定義が広いので一概には言えませんが,遺産情報(あるデータ)に対するクチコミ(注釈データ)はアノテーションの一種と考えられます.

アノテーションについては様々な研究が行われているようです.以下はざっと調べた一部分です.他にもたくさんやられてそうです.

消費者生成メディア,いわゆるCGMが取り入れられているeコマースサイトでは,アノテーション,つまりクチコミは商品情報同様にサイトの中心的なデータになりつつあるようです.

クチコミは売りたい側の意図を反映しない純粋な消費者の声であり,確度の高いマーケティング情報源としてここ数年その収集方法や解析方法を中心に注目を集めています.

遺産情報に対するクチコミは,eコマースサイトにおけるクチコミのように直接商品にフィードバックがかかる類のものではありませんが,それなりに重要な意味を持つかと思います.なぜなら,クチコミは観光情報として活用できるからです.

観光情報として活用が見込まれるということは,平たく言えば地域の経済活性化につながる呼び水になりうる,ということを意味します.恐らく用意されているシナリオは(こんなに単純ではないでしょうが),サイトに地元情報を発信→サイト閲覧による観光客の獲得→観光客のクチコミ書き込み→クチコミ情報を閲覧した更なる観光客の獲得,,,のような感じでしょうか.

実際には,サイト自体の周知(SEO,宣伝/広告),クチコミを増やす方策(その遺産のぬしとなるような人を(お金を払って)サイト側で育てる等),地域情報のこまめなアップデート,他の類似サイト(旅行サイトや地図サイト)との差別化,等など,考えなければならない点が山ほどあるでしょう.

また,集計やマイニングのことも考え,クチコミをGDAのようなXML形式のアノテーションで集めておくことも大事かと思います.クチコミからの知識発見にはXMLのようなデータ表現は役立ちそうです.

最後に.どうでもいいことですが,このサービスで残念なのは遺産のページから貼られている「公式ページ」へのリンク.これ,順次入れ替えて行くんだろうけど,今のところどの遺産を見ても経産省のページにリンクが貼られています…orz

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