戦後の記録映画を残せ

記録映画保存センターのブログで紹介されていましたが,2/21(土)のNHKおはよう日本で記録映画の保存について小特集がありました.

7:35から10分程度だったわけですが,土曜日の朝早くに起きられるわけもなく(!?),録画しておいたものをゆっくり見させて頂きました^^

以下,簡単なメモです.

記録映画とは
当時の世相を伝える貴重なもの.例えば,以下等.
  • 佐久間ダム総集編(1958) → 戦後の経済復興を伝える
  • 水俣 ~患者さんとその世界(1971) → 公害の姿を伝える
現状
横浜のフィルム現像会社を例に,記録映画保存の現状が紹介されました.フィルム現像会社では,映画制作会社のフィルム原版を保管しています.しかし,管理のためのスポンサーが付かず,現状原版は放置されている場合が多いようです.このような放置原版は国内に約5万本,うち30%は記録映画だとされています.

問題点
基本的に放置なので,フィルムの保存状態が悪く,劣化する例が多く見受けられるそうです.例えば,高温・高湿度のためフィルムにシワが寄ってしまったり,フィルム同士がくっついて塊のようになってしまう場合があります.

これらの問題に対し,現像会社でも何らかの手を打ちたいところだそうですが,所有者の許可なく修復保存・廃棄・もちろん二次利用もダメで,対策が打てないのだそうです.

取り組み
そこで,国立近代美術館フィルムセンター 相模原分館では,後世に伝える貴重な記録映画の収集を行うため,所有者の確定と同意を取る作業を続けています.フィルムセンターでは,気温5度,湿度40%を保ち,フィルムが500年は耐えうる保存環境が整っているそうです.

また,記録映画保存センターの村山英世氏が中心となり,記録映画アーカイブプロジェクトも立ち上がっています.氏曰く,このプロジェクトは個人やプロダクションが保管管理する記録映画を公共・国民のものにするためのプロジェクトだそうで,まず第一弾として,日立製作所が持つ「岩波映画製作所」フィルム原版群のアーカイブプロジェクトが企画されています.岩波映画製作所は平成10年に倒産しましたが,これまでに4000本・1億フレームにのぼる映画が残されています.代表的なものには,「雪の結晶(1953)」,「教室の子供たち(1954)」等があります.

センターでは,これらのフィルムから所有者を探し出し,寄贈依頼を行うという地道な活動を続けており,これまでに80%程度は寄贈に同意を得られたそうです.

村山氏は,最終的にはアメリカの「映画保存法」のような仕組みを作らないと解決できないと考えています.持ち主が現れない場合は国に寄贈するという仕組みが作られれば,現像会社で朽ち果てるのをただ待つだけのフィルムが蘇るのかもしれません.

プロジェクトには,映画監督の羽仁進氏も参加されたようで,「フィルムにはその時代でないと記されないものがある.そのため記録映画の見直しには意味がある」旨,語られていました.

活用の取り組み
フィルム・アーカイブはフィルムを保存するのみならず,それを活用する環境ができて初めてフィルム・アーカイブと呼べます.番組では,以下の2つの事例を通して活用に向けた取り組みが紹介されていました.
  • 台東区忍岡中での理科授業
    • 理科の授業で50年前の科学映画を活用.映画自体の質がいいので効果的.科学法則は原則変わらないので古くても使える.
  • デイサービス施設での記録映画上映
    • 高齢者に古い記録映画を上映し,古い映像を通して思い出を語り合ってもらう.
    • 記憶を呼び覚ましてもらうことで認知症予防等に活用.
所感
短い特集でしたが,さすがNHK,内容がまとまっており現状の問題点と取り組みがよくわかりました.ryojin3的にはフィルムをアーカイブするうえで欠かせない(はずの)デジタル処理についても紹介があると面白かったのになぁという感想です.また,NHKでは川口で大々的にアーカイブの取り組みをやられているので,そことの関係や連携(あるのかな)等も知りたかったところです.